文系より冷酷と勘違いされる「理系人間」の悲哀 「あまりに正確すぎる態度」は人のウケが悪い

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なお、ちょっと話題が逸れますが、理系と一般社会では話が逆転してしまうという例は、有名なものが他にもあります。

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「可能性はゼロではありません」という言い回しをどう思うかです。

これ、理系的には、「もうゼロと言い切ってしまいたいし、それでもいいはず。でも、小さな小さな要因たちをきちんと考慮に入れれば、完全にゼロとまでは言い切れないから、一応こう言っておかなきゃ。いやもう、現実的にはほぼゼロなんだけども……」という意味の言葉です。

一方、一般社会においてこの言葉は、「希望はまだある。もしかするとそうなるかもしれない、そうなってもおかしくない」的な意味合いで使われています。

専門家によるこの表現を使った解説を受けて、一般の方々が「可能性はゼロじゃないってことですもんね! やる価値はありますよね!」的な反応をしていたりするのを、テレビでもネットでもたまに見ます。これ、事態としてはかなりよろしくないですよね。

理系のやり方が求められるシーン

閑話休題。理系が己の倫理観に従って動いて、責任ある言動をしようとしても、一般社会の中では逆の姿に映ります。

もちろん、理系側のやり方がまちがっていると言いたいわけでは決してありません。正確な表現をしなければならない場、すなわち、感情がどうあれ不正確な情報を与えるわけにはいかないシーンにおいては、その説明こそが必要とされます。

ただ、いつでもそれが必要かどうかは、考える余地があります。

藍月 要 作家兼フリーランス広報

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あいづき かなめ / Kaname Aizuki

国立小山工業高等専門学校を卒業後、国立長岡技術科学大学に進学。教員免許を取得し、同大学大学院を中退。工業高校で講師として教科「情報」や「電子機械」などを担当する。エンタープレインえんため大賞にて最終選考に残り、2016年にファミ通文庫(KADOKAWA)より作家デビュー。その後、作家を続けながらIT企業の広報に転職。プレスリリースの作成やオウンドメディアの運営などを担当。独立し、現在に至る。その他、神職資格も所持。平成生まれ。

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