文系より冷酷と勘違いされる「理系人間」の悲哀 「あまりに正確すぎる態度」は人のウケが悪い

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理系界隈で過ごしていると、こういった表現を、特におかしいとは思わなくなります。というか、なるべくこういう風に正確に言うのが、倫理的に正しいことだと考えます。そんな教育を受けています。

しかし、この表現の仕方は、理系界隈以外からはすこぶるウケが悪いです。残念ながら、なんと、「歯切れ悪くモゴモゴと言葉を並べ、断言を避けている」ような、冷たい、あるいは責任を取ろうとしない人間の態度だと思われます。

歯切れが悪い、冷たい、責任感が薄い……そういった反感を覚えられると、頭ではどうであれ相手の心が拒否してしまい、こちらの説明を聞いてもらえません。そしてもちろんそれは、文章においても同じです。

誤解しにくい文章のためにはいいのですが、理解しやすい文章とするためには、相手の心が理解を拒むような言葉づかいは、悪手になってしまいます。

理系の体には、正確性の大切さが、倫理観のレベルで刻まれています。ゆえに我々は、明らかでないことについては断言を避けようとします。確たる情報もないのに強い言葉で言い切るのは、はなはだ無責任な態度だからです。

「責任感のある態度」はどちらか?

ところで、次の例文をみてください。

例文A:できる限りで努力はするが、絶対にだいじょうぶとは保証できない。
例文B:死ぬ気でがんばる、だから絶対にだいじょうぶだ!

どちらの方が、責任感のある態度に見えますか? 理系からすると、前者でしょう。十分な確証がないのであれば、いくらそう言ってしまいたくとも、言ってはいけないのです。相手に不正確な情報を与えることになるので、避けるべきです。

一方、一般的にはどうかというと……これは、後者になるでしょう。仕組みとしては、「言い切れる材料はないが、それを承知の上であえて言い切る」ことに、事態への積極性というか、主体性を感じられるからでしょうね。感情はさておき、論理的に十分な確証がないと判断できるのであれば、そう言うべき。それが責任感のある態度……と考える理系社会。

対し、論理はさておき、自らの意思の表明や聞いている人間の安心のために、あえて不確実なことでも言い切るべき。それが責任感のある態度……と考える一般社会。このすれ違いは、知っておくと悲劇がいくらか減ります。

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