星野源が圧倒的な存在に上り詰めた納得のワケ ソロデビュー10周年で新境地、ロールモデルに
さらに星野さんらしかったのは、「誰がどんな形でもコラボしやすいように」という配慮を感じさせる楽曲と映像を用意し、しかも「無料ダウンロードOK」にしたこと。星野さんは黒いTシャツを着て、ベージュの壁を背景に弾き語りするだけに留め、自身の歌声やパフォーマンスを誇示するようなところはありませんでした。
自分が目立つのではなく、むしろ「コラボしてくださるみなさんの個性が引き立つように」と抑えの効いた振る舞いだったのです。そんな配慮があったからこそ、さまざまなジャンルの有名人や一般人が歌、ダンス、楽器、ギャグ、イラストなどで気軽にコラボできたのでしょう。
もう1つ星野さんの配慮を感じさせたのは、「星野源のオールナイトニッポン」の「うちで踊ろうOAコーナー」。星野さんはずっと、コロナ禍で活動休止中の吹奏楽部、軽音楽部、合唱部、音楽家などのコラボ音声を放送し続けているのです。「うちで踊ろう」は人気芸能人たちが次々にコラボしたことから連日のように情報番組で紹介されていましたが、星野さんはテレビでは取り上げられない一般人をしっかりすくい上げていました。
かつて芸能人は憧れてマネをするなど「遠い存在」であるほど人気を集めていましたが、自分らしく生きることが浸透した現在は「身近な存在」であることが人気者になるための前提。事実、SNSやYouTubeをはじめる芸能人は多く、人気を集めていることがそれを象徴しています。
その点、星野さんは「芸能人だから」などの上から目線がなく、「この曲どう?」などの自己主張を感じさせず、「ひと儲けしよう」などの損得勘定をしません。なかなか成功しない時期があったことなども含めて、世間の人々にとっては身近な芸能人となっているのです。
マルチだから生まれたヒット曲の数々
さまざまなジャンルの人がコラボしやすいように呼びかけた星野さん自身、「音楽家、俳優、文筆家」などの肩書きで活動するマルチクリエイター。中学生のときに音楽と演劇を同時にはじめ、「どちらかに絞ったほうがいい」と言われながらも両立を続け、さらに文筆もスタートさせて現在の成功を勝ち取りました。
そんな星野さんの原動力になっていたのは、周囲から言われ、自覚もしていた「才能がない」こと。「才能がなくてもやりたいことはできる」「才能のない人が成功できたらすごい」「飛び抜けた才能がないから複数の挑戦をしてみよう」などの思いが、マルチクリエイター・星野源を生み出しました。今や誰もが認める多彩さは、もともと持っていたものではなく、才能がないことを認めたからこそ育まれたセルフブランディングによるものではないでしょうか。
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