楽天モバイル「周波数の無断変更」にみる危うさ 独自開発の主力端末で電波法違反のおそれ

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楽天モバイルは、通信料金の無料キャンペーン期間中はほとんどこの携帯電話事業での収入がないうえ、自社通信網で賄えないエリアはKDDIへのローミングに頼っており、1ギガバイト当り約500円の対価も支払っている。そのうえで実施したMiniの1円販売は、端末コストを利用者に転嫁することなく自ら被ることを意味しており、負担は小さくない。

大手の常套手段だった1円販売

この「スマホ端末1円販売」といえば、ついこの間までは大手携帯通信会社の常套手段だった。その際、大安売りの条件として、大容量など指定の通信プランの2年契約に加入させ、途中解約には高額の違約金を課すことで解約を防いでいた。

事業開始2カ月余りだが、先行きが懸念される(記者撮影)

だが、改正電気通信事業法の施行によって昨年10月以降は、1000円以上の違約金は禁止され、通信契約を条件とする端末の値引きにも2万円の上限が設けられた。そのため、大手各社の売り方からは一部例外を除き、1円販売はなくなった。

楽天モバイルの場合、 Miniは元々の端末代が現在2万円を切っているため、1円販売は、法的に問題はない。ただし、通信契約には縛りがないため、無料期間が終了するとあっさり解約されてしまう可能性はある。サービスへの満足や信頼を地道に積み上げていかなければならないところで、今回の騒動が起きた。

通信業界に詳しいMM総研常務の横田英明氏は、「これまでも楽天モバイルは通信障害などネガティブな話ばかりが前面に出ている。ライフラインを預かるキャリアは信用ビジネスでありイメージが重要だ。電波法違反のようなものを出す会社のサービスを利用者が積極的に使いたいとは思わないのではないか」と指摘する。

元々、平坦ではなかった楽天モバイルの携帯電話事業拡大への道のりは、自らの失策により、さらに厳しいものとなっている。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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