今こそ身に付けたい、財務3表「超入門」(前編) なぜ3表なのかを知れば決算書が身近になる

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③ 経常利益

本業の利益である営業利益の下には、本業によるものではない、営業外の収益や費用がくる。

会社は儲けたお金の一部を、設備投資に充てたり、社員の賞与を増やしたりする以外にも、預金として銀行に預けたりする。すると利息収入を受け取る。利息は預貯金という本業以外の活動の収益だから、「営業外収益」として「受取利息」を計上する。逆に、銀行からお金を借りていれば利息を支払わなければならず、「支払利息」として「営業外費用」に組み込む。

ほかにも営業外には「為替差益」「為替差損」などがある。メーカーで輸出企業の場合、決済時の為替レートが取引時より円安なら差益、円高なら差損が出る。どちらも営業外収益あるいは営業外費用とする決まりになっている。

本業の利益を示す営業利益に、営業外収益と営業外費用を反映させたものが、「経常利益」だ。

経常利益(けいじょうりえき)は“ケイツネ”とも呼ばれ、事業活動全体による利益として重要視されている。「経常」という字が示しているように、経常的(定期的)な事業活動がもたらす利益といえる。

経常利益の下の特別な利益や損失は…

④ 税引前当期純利益

経常利益の下には特別な利益や損失がくる。ここでいう特別とは、その事業年度に特別に出てくる、という意味で捉えよう。

会社が不動産を多く持っており、その一部を売るとする。アベノミクス効果で地価が上がった足元の市況であれば、高値で売れて売却益が出る。これが「特別利益」だ。子会社株の売却に伴う売却益なども同様と考えていい。

一方で、リストラ費用として割増退職金が計上されれば、「特別損失」となる。ほかにも自然災害や事故・火災による損失、長期間保有している株の売却で生じた売却損なども、特別損失である。つまり毎年のように経常的に発生しない、一時的な利益や損失が特別利益や特別損失となる。

経常利益にこの特別利益を加え、特別損失を引いたものが、「税引前当期純利益」だ。

⑤ 当期純利益

5つの利益の最後となるのが、税引前当期純利益の次にくる、「当期純利益」だ。

両者の違いは読んで字のごとく、税引前か税引後か。ここでいう税とは、主に法人税を指す。当期純利益は「最終利益」「純利益」「当期利益」とも呼ばれる。当期純利益の額をベースに、会社は株主に対するその年の配当を決める。

以上、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益さえ覚えれば、PLは読みこなせる。あとは気になる上場企業の決算書を読んで慣れるだけ。単なる数字の羅列でしかないものから、その会社にしかない特徴が理解できるはずだ。

『会社四季報』編集部
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