花王「メリット」がここまで末永く愛される理由

シャンプーに対する消費者意識は激変した

このように花王の訴求も機能性中心で、広告でも発売時はジンクピリチオン(Zpt)、1985年からはミクロジンクピリチオン(M-Zpt)という有効成分を強調していた。

みやぞんさんも、さらさらヘアになった(画像提供:花王)

それを大きく変えたのが、仲田氏の説明にあった2001年の「弱酸性」で、「新・家族シャンプー」を提唱した。CMも家族で使う情緒的価値を訴求し、現在に続いている。

それには消費者の洗髪頻度が「ほぼ毎日」(1990年代から週5~6回)となり、昔ほどフケが出なくなったのも大きい。こうした不易流行(時代とともに変えること・変えないこと)を徹底して継続したことが、メリットを現在でも3強の地位にしているのだろう。

課題は「高感度女性」の取り込み

また、メリットは昔から「オジサン人気の高い」ブランドでもある。

以前の取材では「死ぬまでメリットを使う」と言い切った50代男性の声を聞いた。今回も「弱酸性のメリットでないとダメ」という中年男性もいた。

「独自のすっきりした洗い上がりが評価されている」と聞くが、昔から行きつけの小料理屋やスナックに通い続ける(ブランドスイッチをしない)男性像をイメージしてしまう。

一方で課題もある。高感度系の女性の支持は高くないのだ。

筆者は「花王という会社を一言で表すと?」と聞かれると、「親しみやすいがカッコよくない」と答えてきた。エールを込めてだが、メリットはそんな花王の象徴のように思う。

ただし、ヘアケアへの消費者意識が多様化した現在、同社は複数のブランドで訴求する。

「花王は『メリット』のほか、キューティクルケアで美髪を保つ『エッセンシャル』、エイジングケアの『セグレタ』の3つのブランドがあります。頭皮・頭髪の清潔領域ではメリット、美髪領域ではエッセンシャル、そして人生100年時代のエイジングケア領域ではセグレタ。3つの領域で、お客様にお役立ちできる商品と価値をご提供していきます」(仲田氏)

近年は、プレミアム価格帯の新ブランドも投入し、ブランド育成に力を注ぐ。

シャンプーは「日用品」に区分されるが、女性消費者の声を聞けば聞くほど、「髪と肌へのケア」に気を遣う美容意識を感じる。その意味では“基礎化粧品”のような存在だ。

「高感度」という言葉も、ウィズコロナ時代は少し意味合いが変わるだろう。それも含めて、プレミアム価格帯に投資する消費者の支持をどう高めていくか。

1932年に「花王シャンプー」(固形タイプ)を発売して以来、90年近く消費者のヘアケアと向き合ってきた会社としての真価も問われる。

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