東大大学院から6年半ひきこもった男性の葛藤

学力と幸福について、今思うこと

東京大学大学院在学中から6年半ひきこもった経験を持つ石井さん。引きこもり中の生活や、抜け出せた理由などお話をうかがいました(写真:不登校新聞)
東京大学大学院在籍中から6年半ひきこもった経験を持つ、石井英資さんにお話をうかがった。ひきこもり中の生活や、抜け出せた理由などをお話いただいた。

――石井さんがひきこもるようになったのはいつからですか。

東京大学の大学院にいたときのことです。就職活動を終えたところで、希望の会社から内定ももらっていました。

はたからみれば、うまくいっているように見えたでしょうね。だけど僕は、すごく疲れを感じていました。

「これから何十年もただただ働いて、年をとっていくのか」と思ったのを覚えています。

当記事は不登校新聞の提供記事です

そこで、大学の研究室に休暇をもらいました。「2週間の休みをください」と。そしてそのあいだ、家ですごしていました。

しかし2週間がすぎても疲れがとれず、休みがどんどん長びいていきました。それが、6年半に及ぶひきこもりの始まりです。

「ひきこもった原因」というと、特別な出来事を想像されるかもしれませんが、僕のきっかけは、本当にそんなものでした。

人生終わりだ

大学院には在籍の上限があるので、ひきこもったままだと中退になります。

当時の僕は、大学院修了以外の選択肢が考えられず、精神的に追い詰められていました。中退をして無職になったら、「自分の人生は終わりだ」とさえ思っていたんです。

ほかの誰かが中退しても、とくになんとも思いません。だけど自分のこととなると、中退すれば「無能な人間」「能力の欠損」という烙印が押されてしまうように思えたんです。

父親から「大学院は修了しろ」「正社員になって3年は働け」などと言われていたことも、影響していたと思います。

大学の先生や友達は、とても好意的な人たちでした。僕が研究室に戻らないのを心配して、家にまで来てくれたこともあります。

だけど僕は、「大学へ行けない自分は、社会の落伍者だ」と思いこみ、羞恥心でいっぱいになっていたので、家に来てくれたみんなに顔向けができませんでした。

あれはきつい体験でしたね。ある不登校の子の話で、「小学校のクラスメイトが、家に訪ねてくるのがイヤだった」と聞いたことがあります。

僕は小学生と同じ苦しさを、大学院で味わったんです。

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