東大大学院から6年半ひきこもった男性の葛藤 学力と幸福について、今思うこと

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――ひきこもっているときは、どのようにすごしていたのですか?

ひとり暮らしをしていたので、最低限の買い物などには出かけます。だけど他人が怖かったので、人と話さなきゃいけないような場所には、出かけようとは思いませんでした。

期限がきてしまったため、大学院は中退です。中退になる前後が、人生でいちばん苦しい時期でした。

卒業して働いているはずだったのに、無職で家にいるだけの生活ですから。自責の念にさいなまれながらすごし、気がついたら30歳を越えていました。

ひきこもっているときに助けになったのは、テレビゲームです。あるとき、「気分転換になれば」と思って何気なくプレイしました。

すると、それまでのどんよりしていた気持ちが、すごくクリアになりました。僕はロールプレイングゲームなど、始めから世界観ができあがっているゲームが好きでした。

物語の世界にひたっていると、視野が自分の外に向くからか、悩みをもたらすような苦しさを考えないでいられます。そんな効果があるとわかってからは、意識してゲームをやるようになりました。

抜け出せたのは受け入れたから

――なぜひきこもりの生活から抜け出せたんですか。

ひきこもりの当事者などが集まる会に参加して、「自分はひきこもりでもいい」と受け入れられたからです。

当事者が集まるイベントに参加し、「自分はひきこもりでもいい」と自然に受け入れられた(写真:不登校新聞)

そもそも僕は、自分を「ひきこもり」だと思っていませんでした。「自分は精神疾患にちがいない」と思って、病名を検索していました。

「ひきこもり」と検索することがなかったので、ひきこもりをサポートする情報につながらなかったんです。

ところがある日、ネットの掲示板を見ていて、偶然「ひきこもりの集まるイベントがある」と知りました。

そしてイベント情報を見ていくうちに、「もしかして自分はひきこもりなんじゃないか」と、初めて自覚したんです。

正直に言うと、始めはひきこもりの人に偏見を持っていました。ひきこもりはきっと、「特殊な暗い人たちだろう」と思い、警戒していました。

だけどイベントに参加してみると、すぐに「ふつうの人たち」だとわかったんです。特別なところのない、どこにでもいる人たちでした。

ひきこもりがこんなにふつうなら、「べつに自分がひきこもりでもいいじゃないか」と自然に受け入れることができました。

それはすごく大きな経験でした。とくに、気の合う人と出会って、ゲームの話ができたのは決定的でした。

「楽しい話をしているときには、自分がひきこもりかどうかなんて関係ない」と実感できたからです。人に対する信頼感を高められる経験になりました。

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