超高齢社会に商機を見る、シブい異業種企業 ハネウェルと提携解消した"あの会社"の意外な戦略

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料金は、定期巡回を含めて要介護度に応じた制限内の利用頻度であれば、介護保険が適用できる。適用できないプラスアルファ分のサービスも良心的な料金体系にとどめている。定期巡回・随時対応サービスは「1事業所当たり40人の利用者があればペイできる」(三輪社長)ため、伸ばしたい分野。潜在ユーザーは、特別養護老人ホームなどの施設に入れない介護が必要な老人。また、長期入院を解消し、在宅療養に移った高齢者も取り込めそうだ。

国内の落ち込み懸念を拭う事業へ

アズビルあんしんケアサポートが手掛けるサービス内容は、訪問介護の事業所を活用した通所介護や介護予防、認知症の利用者向けグループホームなど、多岐にわたる。ただ、「初期投資がかかる有料老人ホームなど大型の不動産開発はしない」(三輪社長)という設立以来の方針を曲げるつもりはない。15年前から介護サービスを始めたにもかかわらず、売り上げ規模がもの足りなく感じるのはこのためだ。

アズビルは施設(ハード)を極力持たず、サービス(ソフト)で事業展開を進める

今後は、看護師の専門領域で医療機関との密接な関係が求められる「訪問看護」に参入するかが課題となる。介護保険制度の改定の行方を見ながら、看護分野への参入を中期的な視野で検討していく腹づもりだ。

アズビルは、海外を含めたグループ全体で、2021年度に売上高3000億円規模、営業利益300億円以上を目指す中期経営計画を掲げている(2013年度は各2500億円、137億円の会社見通し)。しかし、国内の主力事業は、製造業の海外シフトやビル建て替えの一巡で落ち込む懸念があり、計画達成は容易ではない。

2年前にアズビル社長に就いた曽禰寛純氏は、アズビルあんしんケアサポートでは三輪氏の前任者で、この事業に精通している。それだけに、国内主力事業の落ち込みを払拭する収益源として、介護ビジネスに力が入る。加えて、高齢者向け移動支援機の開発を政府補助金も活用して行うなど、本業から在宅医療・介護という新規分野へのフィードバックにも期待を寄せる。

超高齢社会の到来でかつてない商機の広がりが見込まれる中、高齢者や自治体のニーズをうまくつかみ取れるか。曽禰社長ら経営陣の手腕が試される。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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