2020年年金改革は野党炎上商法の潮目になるか コロナ下での与野党協議が示した年金の未来
そうした経緯を経て、野党が首相の出席を求める「重要広範議案」に指定していた年金法案ではあったが、3月から「コロナ対策よりも桜の会の追及が大切なのか」とその姿勢を批判された野党は、年金法案においても与野党共同での修正に切り替えていく。
与党も、コロナ禍での緊急事態宣言の下、例年以上に円滑な運営を心がけ、審議日程に気を遣わなければならないため、野党の方針に協力していく立場をとることになる。そして4月半ばから年金法案は審議に入り5月29日、2020年年金改革法は静かに成立した。
今回の年金改革は、公的年金保険が人生100年時代に即するように、社会経済の変化を先読みして、将来の給付のさらなる充実を図ろうとしたものである(改正の概要)。そしてそれは先のプログラム法で計画されていた「被用者保険のさらなる適用拡大と保険料拠出期間と受給開始年齢の選択制」に沿った改革であった。
そうした与党による改革法案に対して、与野党協議の下、共産党を除く与野党での賛成の運びとなった。2004年以来の年金政治上、初めてのことである。
ここでは、公的年金論議の将来のために、今回の与野党協議の経緯を簡単に書き残しておこう。
協議過程を要約すれば、現在世代と将来世代の給付配分を調整するマクロ経済スライドに関して、名目下限の撤廃(デフレ下でのマクロ経済スライドのフル発動化)をも視野から外すことなく引き続き検討していくことを規定していた検討条項の削除を当初、野党は求めた。マクロ経済スライドの適用によって、基礎年金の将来給付水準が厚生年金より大きく低下することを問題視したためだった。
これに対して、与野党ともに、基礎年金と厚生年金のバランスがズレてしまうことによる所得再分配機能の弱体化は意識しているのであるから、その問題を解決するための本筋である基礎年金の被保険者期間の延長をともに目指し、その実現に必須となる財源調達(国庫負担分)の議論を建設的にやっていこうという方向にいなしていって、協議成立に至ったとみることができる。
筆者自身も、与野党協議が残した年金の未来の姿を、これから繰り返し読んでいくことになるのだと思う。
与野党の協議から生まれた修正・附帯決議とそれに関する若干の説明は、「令和2年年金改革・与野党協議事項」を参照してほしい。年金に興味のあるセミプロ以上の人たちには参考になるはずだ。
本当に潮目になるかは「人」次第
はたして、2020年年金改革は、長年、不毛な対立をしかけ、日本の政治そのものを疲弊させてきた旧民主党議員たちの主戦場、年金政治の潮目になるのか。それとも、法律や国会決議として残されたこれらの文言について、かつての社会保障・税一体改革のときの3党合意のように、「あれは間違いだった」と言う者が出てくる運命を辿るのか。
与野党の修正案を国会に提出して成立させるためには、手続き上、野党は修正案・対案を取り下げなければならない。ゆえに今回、野党は自分たちの修正案・対案を取り下げたうえで、与野党修正案を国会に提出して、その修正案に賛成していた。彼ら野党は、それを忘れることが、将来、本当にないのか――それもこれも、やはり、人次第ということになるのであろう。
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