2020年年金改革は野党炎上商法の潮目になるか コロナ下での与野党協議が示した年金の未来
そうした公的年金保険制度を改正する法案が、先月5月29日に参院本会議で可決成立した。今回の政策形成過程で興味深かったのは、与野党で調整が行われた結果、
●修正部分除く政府案は、共産党除き賛成
となったことである。
過去の2回、2004年、2016年の改革時には、年金は与野党対立法案となり、2004年は強行採決であったし、2016年でも野党・民進党は与党案に激しく対抗し、このときも強行採決であった。2004年7月の参院選を年金選挙に仕立てて大勝利を得、そこで1匹目のどじょうを手にした旧民主党の年金担当の議員たちは、選挙のたびに、自分たちには対案としての抜本改革案があると言って政局作りに勤しんできたようである。
だがようやく、民主党、民進党、そして国民民主党・立憲民主党と渡り歩いた彼らも、年金を政争の具とすることに不利を感じてきたのであろう。
共産党を除く与野党で賛成された年金法案が成立した今、改めて、2004年年金改革時の年金騒動からこの16年間を、忘れっぽい民主主義が完全に忘れてしまう前に、ひとつの歴史の記録として整理してみよう。
年金破綻論に味を占めた旧民主党
元首相の鳩山由紀夫氏が「年金がこのままではボロボロになって、年を取ってももらえなくなるという語りかけは、非常に政権交代に貢献してくれた」と新聞に答えていたように、2009年の民主党政権獲得のころが年金騒動のピークだろう。
始まりは、2004年4月の枝野幸男氏の発言「(現行制度は)間違いなく破綻して、5年以内にまた替えなければならない」辺りであり、彼はその後も同様の発言を繰り返しながら、年金不安を煽りに煽っていく主役を演じていく(海老原嗣生『年金不信の正体』)。
2005年4月には岡田克也氏も「国民年金制度は壊れている」と公言していたのだが、彼を含め、2009年に政権を獲得した後は発言が変わる。岡田氏は、この発言から7年ほど経った2012年5月には、当時の社会保障・税一体改革担当相として国会で「年金制度破綻というのは私もそれに近いことをかつて申し上げたことがあり、それは大変申し訳ない」と詫びるに至る。
政権交代から2カ月ほど後には厚生労働相になっていた長妻昭氏は、テレビで「年金は破綻しません。国が続く限り必ず支える」と言っていたし、数年後の2012年4月には民主党の野田佳彦総理は、「現行制度が破綻している,あるいは将来破綻するということはない」と国会で答弁していた。
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