大統領選候補者へサイバー攻撃「諸外国」の狙い イラン、中国、ロシアの狙いとはいったい何か

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2016年の大統領選挙以降、アメリカは選挙のサイバーセキュリティを強化するため努力を重ねてきた。

2017年には、国土安全保障省が医療、上下水道、通信、金融、エネルギーなどに加え、選挙インフラを重要インフラに指定した。「選挙インフラ」には、選挙関連のデータやデータの保存場所、ウェブサイト、ソーシャルメディアのアカウント、有権者の登録データベース、電子投票機、票の集計・監査システムなどが含まれる。

国土安全保障省は、アメリカの情報機関や司法当局、州政府、民間企業とも協力し、選挙システムを守るため、サイバー攻撃情報の共有やサイバーセキュリティ研修などを実施してきた。

有権者の登録データベースが改ざんされないよう堅牢化も行っている。連邦議会が2018年に選挙のサイバーセキュリティ予算として認めた額は、3億8000万ドル(約410億円)に及ぶ。

大統領選のサイバーセキュリティ対策は複雑に

しかし、新型コロナウイルスの流行で、今年の大統領選挙のサイバーセキュリティはさらに複雑になった。

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コロナ感染を防ぐため、選挙担当者の多くは自宅から仕事をしている。ログイン時の2段階認証や、外部から社内のネットワークに安全にアクセスするために通信を暗号化し、やり取りする情報が盗み見される危険性を回避するVPN(Virtual Private Network、仮想専用線)の利用など、テレワークのサイバーセキュリティ強化が必須だ。

しかも今年は、投票所での投票だけでなく、郵便投票が増えると予想され、守らなければならない選挙インフラが拡大、課題が山積みしている。

例えば、郵便投票用の用紙と封筒の大量印刷、有権者の名前と住所の正確な把握と郵送、投票受付のためのデータベース管理を円滑に進めるには、身代金要求型ウイルスによる業務妨害を防ぐサイバーセキュリティの確保も不可欠だ。郵便投票に関する問い合わせのメールに紛れ込ませたサイバー攻撃にも備える必要があろう。

松原 実穂子 NTT チーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト

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まつばら みほこ / Mihoko Matsubara

早稲田大学卒業後、防衛省にて勤務。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院に留学し、国際経済・国際関係の修士号取得。修了後ハワイのパシフィック・フォーラムCSISにて研究員として勤務。帰国後、日立システムズでサイバーセキュリティのアナリスト、インテルでサイバーセキュリティ政策部長、パロアルトネットワークスのアジア太平洋地域拠点における公共担当の最高セキュリティ責任者兼副社長を歴任。現在はNTTのチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストとしてサイバーセキュリティに関する情報発信と提言に努める。著書に『サイバーセキュリティ 組織を脅威から守る戦略・人材・インテリジェンス』(新潮社)。

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