2輪の名車「BMW R50S」で味わった驚きの事件 なぜかアイドリングが乱れるなと思っていたら

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僕の心は、突然降って湧いたBMWの名車の名に大きく揺り動かされた。唐突に、欲しいと思い、乗りたいと思った。

僕は、4輪にしても2輪にしても、クラシックモデルは「見て愛でるもの」といったスタンスだったので、なぜ「乗りたい」と強い衝動に駆られたのかは未だわからない。

価格的にもなんとかなる額だったので、その場で買うと決めた。知人は、驚いたような、慌てたような感じだったが、ショップを出るときは、「よかったですね!」「羨ましいなぁ!」と言ってくれた。

翌週、予定通り実車を前にしたが、きれいだった。「コンディションはよさそうです。一とおりの調整だけでお渡しできると思います」とショップオーナー。

納車も早かった。でも、気になることがひとつ残ったままの納車になった。それはアイドリングだ。

BMWのフラットツインは(たしか)500~550回転くらいの低回転でストンストンといった感じでバランスよくアイドリングするのが「愛でるポイント」のひとつ。

なのだが、僕のR50Sはなぜかそれが乱れた。ショップのオーナーもいろいろやってくれたのだが上手くいかなかった。でも、一刻も早く乗りたくてしょうがない僕は待てない。

で、結局、「乗りながら様子を見て調整してゆきましょう」ということになった。

エンジンをバラしてみると…

R50Sはボンネビルほど力強くもないし、速くもない。でも、全体の作りも、乗り味/走り味も上質そのものだった。「ロールスロイスに乗っているような」とでも言えばいいのか。

R69Sの方がパワフルだし速くもあるが、「いいもの感」ではR50Sが勝っていると感じた。あまり飛ばさず、クルージングの快適さを楽しんだ。だから、仲間と走るより、ひとりで淡々と走ることが多くなった。

ほんとうに「買ってよかった!」と思った。でも、「アイドリングを愛でる」ことだけが未達のまま残った。BMWを知り尽くしているショップのオーナーも、懸命に取り組んでくれたのだが、どうしても直らない。

そして、とうとうエンジンをバラスことに。

で、バラしてみた結果……「左右のピストンが“微妙”に違う」ことがわかったのだ。

「まさか!ですね。こんなこと初めてです。驚きました。でも、いい経験になりました。ありがとうございました」と逆に感謝された。

驚きの事件の主役を務めたピストンは、今も僕の仕事部屋に置いてある。初めて僕の仕事部屋に来た人は、たいてい、ピストンに目を止め、何のピストンですか!?」と聞く。

で、僕は待ってましたとばかり「R50Sピストン事件」を話し始める。多くの楽しい思い出の中でも◎が付く。

(文:岡崎宏司/自動車ジャーナリスト)

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