「電機の試練」大手8社襲うリーマン以来の難局 長期戦も予想される中、耐え抜く力はあるのか

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(出所)『週刊東洋経済』6月15日発売号「電機の試練」より

リーマンショックで2009年3月期に国内製造業で過去最悪となる7873億円の最終赤字を出した日立製作所も復活が顕著だ。リーマンショック前に22社あった上場子会社や事業を次々に売却して選択と集中を進めた結果、残る上場子会社は2社のみとなった。安定的に稼げる社会インフラなどの企業間ビジネスへと大きく舵を切っており、営業利益率はソニーに続く8%近い高水準に達している。

『週刊東洋経済』6月15日発売号(6月20日号)の特集は「電機の試練」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

また三菱電機は大手電機8社の中で唯一、リーマンショック以降に赤字を計上していない優等生とされてきた。携帯電話などの不採算事業から早期に撤退。大手の中でもっともバランスの取れた安定経営を続けてきた。

一方、パナソニックは車載電池と住宅の強化が不発に終わり、低収益体質になっている。台湾・鴻海精密工業傘下のシャープも液晶パネルに頼るビジネスから抜け出せず、コロナ禍のマイナス影響を大きく受けている。また経営再建中の東芝は、市況が乱高下しやすいLNG(液化天然ガス)事業や家電など消費者向け事業を売却し、取引が安定している社会インフラ中心に再構築したことで復活の兆しが出ているが、まだ病み上がりで問題を多く抱えている。

韓国サムスンは10年間で30兆円の純利益を稼いだ

ただしソニーや日立製作所、三菱電機も「勝ち組」とはいえない。8社の中で20年間の累計利益が最も大きい三菱電機ですら、その額は約2.4兆円。韓国サムスン電子は同期間に約30兆円を稼ぎ出している。さらにソニーや日立製作所、三菱電機も2021年3月期は大幅減益が避けられない。ソニーはエレクトロニクス関連、日立製作所は車載や産業機器関連、三菱電機は産業メカトロニクスへのコロナ影響が特に大きいからだ。

再び大きな試練の時を迎えた電機業界はどう戦っていくのか。コロナ禍は各社に例外なく襲っており、企業それぞれが抱える課題も浮き彫りにしている。構造改革のスピードが弱まれば、どの企業も転落していくだろう。さらにコロナが終息しても密集を避け、人との接触を減らすという流れは続く可能性が高い。以前とは異なるニューノーマル(新常態)でどう収益を伸ばしていくか。アフターコロナではこれまで以上に勝ち組と負け組がはっきりとする世界が待っている。

『週刊東洋経済』6月20日号(6月15日発売)の特集は、「電機の試練」です。
冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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