黒人記者が語る「抗議デモ」と「人種主義」

知らないうちに、死んでるのかもしれません

ミネアポリス、首都ワシントン、ニューヨーク……アメリカ中で起きている抗議デモの背景にあるものは(写真:REUTERS/Jim Bourg T)

「暴動は理由なく現れるのではない。私たちの社会には、暴動を非難するのと同じくらい激しく非難されなければならない、ある状況が存在し続けている。そして結局のところ、暴動とは声を聞いてもらえない者たちの言語なのだ」

マーティン・ルーサー・キング Jr.

ぼく自身、および世界の黒人コミュニティが感じている痛みについて「日本の人たちに説明してください」と頼まれると、ぼくはがっかりしてしまいます。人間は同じ痛みを感じるはずで、誰かに「これって痛いんだよ」と説明するのは、正直なところ、人間じゃない相手に説明しているような気分になります。個人的に言うと、「抗議デモや暴動、略奪をする理由がわからない」という人に会うと、ぼくはその人は嘘をついていて分からないフリをしているか、魂を去勢されてしまったのではないか、と思ってしまいます。

それどころか彼らは、知らないうちに死んでるのかもしれない、と。

なぜ白人に抗議デモについて語らせるんだろう

それでも、ぼくは引き受けることにしました。なぜならぼくは、例えば先週TBSが話を聞いていた白人至上主義者のジャレッド・テイラー氏よりも、きちんとした解説ができます。テイラー氏は黒人の知性は白人より劣ると信じ、そう喧伝しています。それを聞いた人は、それならば黒人の命は白人の命より価値がない、と思うかもしれません。それにぼくの場合は、厚切りジェイソン氏のような白人のコメディアン(彼も先週朝のニュース番組でインタビューを受けていた)にはないかもしれない当事者性を持って、彼が公平には語らないかもしれない問題について、洞察とニュアンスをお伝えできると思うのです。

どうしてこの国のメディアは、比率として不自然に大きく黒人たちにのしかかっている問題について、堂々と白人たちの前にマイクを突き出すのだろうって? いい質問です。もちろん、誰でもいいから黒人タレントにマイクを向ければいいわけでもありません。アイクぬわら氏、ボビー・オロゴン氏が単に黒人だからという理由で、何か大事な、言わねばならないことがあるとは限りません。しかし、この国の主要なメディアはなぜ、この問題を語る資質を持っていて、視聴者にわかりやすく話して知識を与えることのできる解説者を、一生懸命探さないのでしょう?

もし日本のメディアが本当に注意を払っていて、もし日本でも「ブラック・ライブス(黒人たちの命)」が本当に「マター(大切)」なら、そういう努力をするでしょう。しかしメディアが白人の考えしか取り上げないのを見ていると、メディアは真実を知りレポートしたいのではなくて、単に状況を理解しようとしているように見られたいだけなんじゃないか、と感じてしまいます。

次ページテレビで見る略奪行為を「黒人っぽさ」と感じていたら
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • ドラの視点
  • 精神医療を問う
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
三菱重工と日立 「統合」破談から<br>10年 製造立国の岐路

10年前に統合構想が破談になった三菱重工業と日立製作所。その後両社は対照的な道を歩み、2009年に伯仲していた時価総額は今や日立が大きく上回っています。本特集では明暗が分かれた三菱重工と日立を主軸に、製造立国・日本の生きる道を探りました。

東洋経済education×ICT