橋崩落の上田電鉄別所線「市民パワー」で復活へ 台風で鉄橋が被災、全線再開後に乗客戻るか

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なぜ上田市はここまで公共交通に力を入れるのだろうか。理由について上田市交通政策課では次のように説明する。

「高齢化の進展に伴い、高齢者を中心とした買い物弱者が増加したことに加え、中山間地域の集落が公共交通空白地域となり、居住者の移動が制約されていることなどを踏まえ、こうした人たちの移動手段の確保が急務であると考えています」

その政策は鉄道だけでなくバスにも及ぶ。2013年10月からは上限運賃を設定した「運賃低減バス」の実証運行が始まり、6年間の実証により効果が得られたことから、2019年10月からさらに3年間の運行継続を実施している。

以前筆者が紹介した京都府京丹後市の例(2019年6月23日付記事「京丹後市『上限200円運賃』は地方交通の革命か」参照)に近い内容で、上田市では欧州のゾーン制を思わせるエリア分けを設定し、同一エリア内は最高680円だったところを300円、隣接エリア間は最高1360円だったところを500円上限としたうえで、50円刻みの設定としている。

上田駅前の路線バス(筆者撮影)

利用者減少に伴い運賃収入が落ちて運行事業者への補助金の額が増大しつつあったが、地域に欠かせない移動手段であるバス路線を維持することも大切だと考え、そのためには利用者を増やすことが重要という発想から運賃低減が効果的という政策に行き着いたという。

気になる利用者数は、導入前の2012年度は99万人だったものが、2014年度は125万人と26万人の増加となっており、近年再び減少傾向ではあるが、昨年度も114万人となっており、市の負担金も微減で推移している。

別所線の被災で新たな問題

そんな上田市の公共交通における新たな問題が、昨年秋の台風19号の被害だ。前述のように上田電鉄別所線の起点となる上田駅と次の城下駅の間にある赤い鉄橋が一部流されてしまったからである。

上田電鉄の城下駅(左)と代行バス(筆者撮影)

上田電鉄では昨年10月15日から下之郷駅を起点に鉄道と代行バスの運行を開始し、翌月からは城下駅まで列車の運転を延伸したものの、現在も上田―城下は代行バス連絡としている。

しかし別所線に関しては上田電鉄が直後から「別所線災害復旧支援」の銀行口座を開設したところ、約2カ月で1600万円あまりを集めた。昨年12月には上田市ふるさと寄附金のコースに「別所線応援プロジェクト」を追加し、約1カ月で3000万円を超える寄附が寄せられた。さらに上田市自治会連合会、別所線電車存続期成同盟会などの団体から、早期復旧を求める5万人余りの署名もあった。

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