橋崩落の上田電鉄別所線「市民パワー」で復活へ 台風で鉄橋が被災、全線再開後に乗客戻るか
市民らが別所線に寄せる気持ちの大きさに驚くばかりだが、こうした支援の高まりを受けて、上田市は判断した。
「年間利用者数130万人の上田電鉄別所線は、市民の重要な移動手段であることはもとより、地域の観光面に多大な貢献をしていることなどを重く受け止め、復旧を決断しました。国と財源確保の協議をする中で、市の負担を軽減するため、橋梁保有を前提とする補助金を活用することとしました」(交通政策課)
災害復旧補助としては、鉄道軌道整備法に基づくものが一般的だ。しかしこちらは国の負担は4分の1で、地方自治体にも4分の1、鉄道事業者には2分の1の費用負担が生じる。上田電鉄への適用は現実的ではない。そこで市では国の「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助」の適用を選んだ。
こちらは国と地方自治体が2分の1ずつを負担するもので、市では負担分の95%を交付税措置とすることで実質的な負担を2.5%に抑えている。この仕組みでは、復旧した施設を地方公共団体や公共的団体などが保有する場合に限るという条件があるので、上田市が橋梁を所有し、復旧事業の事業主体となった。
取り巻く環境は厳しい
では、上田市の公共交通政策が順風満帆かというとそうではない。バスについては全国的に問題になっている運転手不足に対応すべく、昨年12月から一部路線の休止や事業者変更を行っている。人口についても今年6月現在の推計の数字は15万3156人で、10年前の15万8914人と比べると少し減っている。
さらに別所線の乗車人員は、約半年間にわたり代行輸送を行った2019年度が大きく落ち込んでいる。乗り換えの不便や所要時間の増加が影響していると思われるが、2021年春頃としている復旧までに減少を抑え、全線再開後の回復ができるかが重要になってくる。
それでも一連の取り組みを見て感じるのは、自治体の理解と生活者の支援の姿勢が明確であることだ。だからこそ上田電鉄は復旧へ向けて工事を進め、バスは運賃低減を導入できた。
欧米ではかなり前から、人口減少や少子高齢化を見据え、公共交通は地域が支えていく体制が確立している。日本はまだそういう状況に至っていないが、人口減少や少子高齢化は共通の悩みである。公共交通の存続を事業者に押し付ける時代は終わった。生かすも殺すも「地域の気づき」が大事になることを、上田電鉄と上田市の事例は教えてくれる。
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