ヤマトHD、「宅配便急増」でも喜べない深刻事情 消えぬ現場の不安、大規模リストラ不可避に
今後、ヤマトが収益構造を立て直すためには、荷物を増すだけでなく、いかに人件費を抑えるかが問われる。ヤマトはこの4月から、EC関係の荷物を中小事業者に配送委託するモデルを導入し、実証実験を本格化させている。東京23区内や横浜市などにも同サービスの実験対象エリアを拡大している。
EC関係の荷物を中小事業者に配送委託すれば、うまくいけばセールスドライバーに配送させるよりもコストが抑えられる。だが、問題は約6万人のセールスドライバーの運ぶ荷物がなくなってしまうことだ。
前出の中堅社員も「セールスドライバーの運ぶ荷物の8割程度を占めているEC関係の荷物を外注先に任せるならば、セールスドライバーは今の半分ぐらいしか必要ないだろう。EC関係の荷物の配送委託が始まったエリアではドライバーの業務集約が進んでおり、いつリストラされるか不安だ」と話す。
余剰人員の削減は不可避に
ヤマトが収益構造を立て直すためには、余剰人員の削減は避けて通れない。2024年3月期に売上高2兆円、営業利益率6%以上、ROE10%以上を達成するという高い目標を掲げているならなおさらだ。一方で、どの程度の人員を削減するのか、現時点では不透明だ。
2020年1月に発表した経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」では、グループ会社を再編して管理間接業務や調達業務を集約する方針を掲げた。2021年4月にはヤマト運輸を存続会社として、ヤマトロジスティクスなどの6子会社を吸収・合併。重複業務の削減や経営効率化を目指す。
ヤマト広報は「単なるリストラ(人員削減)は予定していない。お客様にしっかりと向きあえる体制を構築するため、あらゆる経営資源の最適配置を進めている」と回答している。
ヤマトが配送料の値上げに踏み切った当時(2017年3月期)の人件費は7692億円(前期比7%増)に膨れ上がり、営業利益率は2.3%(前期は4.8%)に落ち込んだ。そこで、「サービスを維持するためには適正な運賃をいただく必要がある」(当時の山内雅喜・ヤマトHD社長)と強調して配送料の値上げを断行するに至り、それが顧客の離反と荷物量の大幅な減少を招き、現在に至っている。
足元ではコロナ特需の追い風を受けているが、いつまで続くかわからない。構造問題を抱えたまま、今後も走り続けることができるのか。ヤマトHDは難しい局面を迎えている。
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