日本中小企業政策史 清成忠男著 ~レベルの高い中間多数派が日本経済の成長を支えた


 近年の問題意識は逆である。「廃業が増え開業が減っているので市場が活性化しない」という認識である。それに対しても著者は首をかしげる。「白書」で掲げられる開・廃業を算定する手法を開発したのは著者だが、数の推定には問題がある、と指摘している。また「適正な数」などもともと存在しないし、中小企業は固定的な階層ではなく、バラツキが多く、そしていつも変化しているのである。

かくして法は現実を追認する。「改正・中小企業基本法」(1999年)の精神は「中小企業は新たな産業を創り、市場競争を促進し、労働市場に就業の機会を提供し、地域経済を活性化させる役割を担ってきた」とする認識にあるが、それは著者の実証と主張の歩みと重なっている。知識社会におけるベンチャー論や経営革新など、著者の40年を超える集大成である本書は新鮮で説得力がある。

きよなり・ただお
法政大学学事顧問・名誉教授。1933年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。法政大学経営学部教授を経て、96~2005年同大学総長・理事長。著書に『国立大学法人化の衝撃と私大の挑戦』『時代を映す中小・ベンチャー企業研究30年』『大淘汰時代の大学 自立・活性化戦略』。

有斐閣 3990円 320ページ

  

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