ウィズコロナ(withコロナ)、アフターコロナ時代は、テレワークなどの多様な働き方が加速するだけでなく、所属組織や人間関係においても「見切る」「見直す」考え方も加速することだろう。近年の災禍を振り返ってみると、このような局面は3.11でも起こっていた。ただし、コロナ禍ほど広範囲で人々の心理に影響を与えている例はない。
「すべては、その人がどういう人間であるかにかかっている」と述べたのは、ナチスの強制収容所の生き証人で、実存分析(ロゴセラピー)の創始者であるV・E・フランクルだ。
フランクルは、第2次世界大戦後にニヒリズムや悲観主義が蔓延する社会に対し、強制収容所での有名なエピソードから1つの教訓を示した。その収容所では、ナチスの親衛隊員である所長が、密かに自分のポケットマネーで囚人のために薬を購入していたのだった。他方で、最年長者の囚人は、囚人仲間を「ぞっとするような仕方で」虐待していた。
ますます「人間性」を突き付けられる
フランクルは、この経験を踏まえて「最後の最後まで大切だったのは、その人がどんな人間であるか『だけ』だった」と主張したのである。
この真理は現代においてもまったく変わるところがない。むしろ現在のコロナ禍で痛いほど突き刺さってくるエピソードではないだろうか。
わたしたちはこれからも、コロナ禍が引き起こすさまざまな事件や出来事への関わり方をめぐってますます「人間性」を突き付けられることになるだろう。そのような視点から眺めれば、ウィズコロナ、アフターコロナ時代は案外悪いものではない。フランクルのいう「裸の実存」に還元されやすくなるからだ。
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