北朝鮮「デノミ」実施は政治目的、すべては後継体制づくりのため

金正日体制になってから毎年元日に発表される党・軍・青年団体機関紙による「共同社説」は、1年間の同国の国家運営を示す重要な資料。10年1月1日の共同社説には「人民生活の向上」が最初にうたわれた。この数年、従来のスターリン型とも言える重工業、国防経済優先路線から、今年は一転して軽工業と農業という、国民生活に密接な関係がある分野を重点課題として指摘している。

慶應義塾大学の礒崎敦仁専任講師は「衣食住を満ち足りたものにし、国民の民心を体制側に引きつけておくべきものがあるのだろう」という。それは、安定的な後継者づくり、ということだ。

礒崎氏はさらに、金正日総書記が後継者としての足場を固め始めた70年代と現在の状況を比べる表現が、今年の共同社説には含まれていると言う。金総書記の三男・ジョンウン氏が後継者の有力候補とされているいま、円滑に体制を後継者に渡すためには「できるだけ不安要素を取り除いておこう、という金総書記の“親心”」(礒崎氏)という説明だ。

デノミという経済的手段が、統治能力の確保、円滑な後継者体制づくりという主要な政治手段の隠れ蓑とされる。いかにも北朝鮮らしい。しかし、民心をつかめるほどの生活向上を図るためには、「対外市場を拡大して対外貿易活動を積極的に展開」(共同社説)することが不可欠になる。

体制護持を第一に、市場経済を取る外国との関係を深めなかった北朝鮮。対外貿易を積極的にできる自信があるのかどうか。その覚悟の度合いがわかるのは、今後の北朝鮮自身の出方次第だ。

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