北朝鮮「デノミ」実施は政治目的、すべては後継体制づくりのため
新年を迎えて、さらに「貨幣改革(デノミ)は経済的理由はないのでは」と言える状況であることがわかった。米国の自由アジア放送(RFA)によれば、北朝鮮内部の事情通の言葉を引用、「給料だけでなく鉄道料金をはじめとする公共料金の値段が変わっていない」と打ち明けている。公共料金も100倍になったわけだ。モノの供給がきちんとなされておらず、一方で実需はあるので物価は上がる一方だという。
それならば、北朝鮮当局が言う「インフレ抑制」という目的はまったく成し遂げられないということになる。そのため、今回のデノミは「(実施されたのは)政治的な理由が大きい」との指摘が出ている。
北京大学朝鮮半島研究所副所長の金景一教授は、「今回のデノミは複合的な理由がある」とし、「物価抑制のほかにも国民統制の強化が狙い」と指摘する。
北朝鮮国内のヤミ金融やヤミの外貨流通、それに「チャンマダン」と呼ばれるヤミ市場が市民生活に浸透し、その存在があまりにも大きくなりすぎため、国民への統制が不可能になった点を問題視した、と金教授は指摘する。そのため、旧券を無効化することで、市民がタンス預金の形で保有する資金を吸収し、地下経済の温床となるヤミ市場の縮小を図ったのではないかと説明する。
また、京都産業大学の後藤富士男教授も「餓死者が出るほどの厳しい経済状態だった90年代後半に比べれば、2000年代に入って経済も安定し、それなりの成長もしてきた。それはある程度の市場経済化を当局が容認してきたこともあるが、一方で、混乱も生じた。その混乱状態が拡大するのを恐れたための措置とも言えるのでは」と言う。
デノミを実施してカネを市民から吸収させ、市場をも縮小させる。その裏には、「流通体系の整備と配給制度の拡充に自信があるのでは」(金教授)。であれば、社会主義計画経済の強化が進められ、国家の統制力も今後強まっていくのだろうか。
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