喋りは上手いのに「営業ベタな人」に欠けた視点 マシンガントークは「お客の反発を買う」だけ

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もう1つ、セールスでの例を見てみましょう。ある営業担当者が、客に流暢に商品の説明をしたあとに聞きました。

営業「これらの機能がついて、この金額は本当にお買い得です。気に入っていただけましたでしょうか?」
客「……」
営業「どこか気になるところがございましたか?」
客「……」
営業「やはりお値段でしょうか? そうですね、お値引きさせていただいて、○○円ではいかがでしょう?」
客「……」
営業「う、わかりました! 送料と設置費用もサービスします」

この担当者は、なぜ勝手に値引きを始めてしまったのでしょうか? それは、客が黙ってしまったので「何か気に入らないところがあったのだろう。金額に納得がいかないのだろうか? このまま断られてしまうのではないか?」と考えて不安になり「その点を補うためにしゃべらないと!」と思ったからです。

でも、じつは、客は最初の金額で納得していて「この商品を買ったら、家のどこに置こうかな……?」などと考えていたから黙っていただけかもしれません。

喋れば喋るほど「交渉では不利」になる

ちなみに、私は、法律相談で相談者から話を聞いたときは、解決策として考えられる方法をアドバイスしてから「私たちが依頼をお引き受けすることもできます。ご依頼いただいた場合の費用は○○円です」と提案し、その後は黙っています。

依頼してもらおうと次の言葉を続けたりしません。この間、相談者は、自分の問題、解決方法、依頼した場合の費用など、いろいろなことを考えているからです。

沈黙が長く続くこともありますが、私は気にせずに黙っています。そうすると、相談者は、熟考した末で「では、お願いします」と依頼をしてくれることが多いです。

交渉は「とにかくしゃべって自分の考えをわかってもらおう」とする人が多いのですが、しゃべりすぎは注意しなければなりません。

先ほどご紹介したように、かえって自分に不利な情報を与えてしまったり、相手がせっかく考えてくれているのに、その思考を妨害したりという弊害もあるのです。

谷原 誠 弁護士

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たにはら まこと / Makoto Tanihara

1968年、愛知県生まれ。明治大学法学部卒業。91年司法試験に合格。企業法務、事業再生、交通事故、不動産問題などの案件・事件を、鍛え上げた質問力・交渉力・議論力などを武器に解決に導いている。現在、みらい総合法律事務所代表パートナー。ニュース番組等の解説でも活躍する。
著書に『「いい質問」が人を動かす』『気持ちよく「はい」がもらえる会話力』(以上、文響社)、『弁護士が教える気弱なあなたの交渉術』『雑談の戦略』(以上、大和書房)など多数ある。

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