出勤再開で上司に会うのが苦痛な人への処方箋 「出勤したくないのは上司のせい」という人へ

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本音では、上司のつまらない雑談につき合って時間をムダにしたくないはずです。それをガマンしてつき合うのは、上司と部下が利害関係にあるからでしょう。仕事と関係のない雑談とはいえ、話を聞かなければ自分に不利益が生じるかもしれないと考えてしまうのです。真面目な人ほどそうした思考に陥ります。

けれど現実には、上司の話を聞かなったくらいでペナルティを受けることは考えられません。仕事に支障がないわけですから、雑談につき合いたくなければつき合わなくていいのです。にもかかわらず、上司の機嫌が悪くなるのを恐れるなどの理由でつき合っていたら、損するのは自分だということを自覚すべきでしょう。

というのも、多くの人は上司のつまらない雑談をうまくかわしているわけです。そんな中で嫌な顔をせずにつき合ってくれる相手がいたらどうなりますか? 上司はうれしいですよね。結果、あなたに雑談の聞き役が回ってくるのです。トランプのババ抜きでいえば、ババを引かされる損な役回りを担うハメになるのです。

ですから、もしあなたが雑談の聞き役になっているとすれば、そこから早く抜け出すことです。例えば、上司のつまらない雑談が始まりそうになったら、「すみません、すぐに片づけなければいけない仕事があるので……」と、仕事を理由にその場を外しましょう。「打ち合わせに行ってきます」とか「ちょっとトイレに……」など、言いやすい理由を考えておくといいです。損な役回りを回避しましょう。

周りに合わせることに疲れる

私たち精神科医のもとを訪れる人は、心の苦しさ──不安や不満、抑圧感などに苛まれています。心の苦しさを和らげるために、私は何に苦しみ、何をストレスに感じているのか、患者さんに質問をしながらその原因を探ります。すると、職場や学校、友人や近所のつき合いなどの人間関係において、周りに合わせることに疲れている人がとても多いことに気がつきました。

『会社に行きたくない。さて、どうする?』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

その人たちには、共通点があります。自分が周囲に「どう思われるか」「どう見られているか」をとても気にしている点です。つねに人にどう思われるかを気にしているので、心の休まる暇がありません。これでは、疲れてしまうのは当然ですよね。嫌われないために、周囲に合わせる一方で、素の自分を押し殺すので、だんだん窮屈になっていきます。

これが一時的なつき合いで済めば、それほど苦労はしないでしょう。一時、ガマンすればいいわけです。でも、そうはいかないケースのほうが多いと思います。職場の上司との関係がまさにそうです。同じ会社で仕事をするあいだは、嫌われないために表面的なつき合いを続けていかなければなりません。

詳しくは、拙著『会社に行きたくない。さて、どうする?』に書きましたが、職場の人間関係で心が押し潰される前に、適切な対処法を身につけてほしいと思います。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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