企業倒産「夏場に急増」を金融当局が警戒する訳 地銀の与信費用少なく、「嵐」再来に備える

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帝国データバンクの赤間氏は「弁護士の在宅勤務や裁判所から不急の申し立てを見送るよう要請が出ていることで、5月以降はいったん倒産件数が減る可能性がある」と指摘する。ただ、「遅れ気味の破産手続きが進むことで8~9月に急増する可能性がある」という。「2020年は倒産件数が1万件を突破する可能性がある」とみている。

倒産件数が1万件を超えれば、2013年以来7年ぶりとなる。

一方、一部アナリストの試算によると、地方銀行の与信費用の見込みは貸出総額の0.2%程度。「コロナで融資先が厳しい状況に置かれている割に、意外と少ない印象だ」(同)という。

ある当局者は「収益環境が厳しい中で、思うように与信コストを盛り込めていない先もあるのではないか」と推察する。コロナの影響の長期化で、予想以上の与信費用が掛かれば一部の地銀の財務基盤に影響が出る可能性も出ている。

「台風の目」の中の日本

海外中銀と連携して実施したドル資金供給、上場株式投資信託(ETF)の購入増、金融機関向けの特別オペの創設、民間金融機関の無利子・無担保融資を円滑に進めるための新たな資金供給手段の決定――。日銀は3月以降、矢継ぎ早に対策を打ち出してきた。

足元では、3月に大幅下落となった日経平均株価が急ピッチで持ち直しているほか、緊急事態宣言の全面解除で事業活動も少しずつだが再開している。しかし、再び「嵐」が来ることへの警戒感がくすぶっている。

金融当局者の脳裏には、2008年の金融危機時の記憶が鮮明に残っている。この年、3月にベアー・スターンズの救済があったが、危機は終わらず9月のリーマン・ブラザーズ破綻でより深刻な事態に陥った。金融庁や日銀の幹部は、コロナ感染第2波に関する内外の情報や倒産件数、マーケット動向などを注視している。

今は台風の目の中にいる――。日銀内ではこんな声が出ている。

(和田崇彦、編集:石田仁志)

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