続いて、経常利益に対する社会貢献支出額が占める比率(社会貢献支出比率)を見ていこう。
バラツキをならすため、経常利益と社会貢献支出額はそれぞれ3年平均で計算。さらに、利益が低いために比率が高くなる企業を除外する狙いから、「売上高経常利益率1%以上」「自己資本利益率(ROE)プラス」を条件とした。
トップは3年連続で、印刷業中堅のサンメッセ(10.1%)。3年平均の経常利益2億円に対して、2467万円を支出している。
「地域社会との共生」をCSR活動の重要テーマに掲げ、本社のある岐阜県大垣市を中心に積極的に活動。知的障害者授産施設「ハーモニー大垣」によるパンの出張販売会の社内実施や、本社野球場の少年野球・中学校などへの貸し出しなどを行っている。
地元に生息する絶滅危惧IA類の淡水魚「ハリヨ」を、岐阜県から許可を得て飼育したり、年2回、全事業所で「オールサンメッセクリーン大作戦」と称する清掃活動を実施するなど、環境活動にも積極的だ。
製紙会社と協力して岐阜県の間伐材を使った地産地消型製品をプロデュースするなど、事業活動における社会課題解決の取り組みも高いレベルにある。
2位は、アース製薬の7.34%。経常利益41億円に対して、3億円を支出している。タイにおいて、デング熱予防のため、学校や病院などを通じて予防行動を呼びかけ、自社商品を提供。国立大学のキャンパス環境整備や学生の奨学金制度、研究支援などの活動を進めている。
3位は、大日本印刷の5.74%。経常利益486億円に対して、27億円を支出している。本社所在地の東京・市ヶ谷地区で武蔵野の雑木林を再生する「市谷の杜」プロジェクトを推進。2006年からは、途上国の生産者の生活を支援するフェアトレードを展開し、来客用・社内消費用のコーヒーを認証製品に切り替えている。
震災復興支援は年々低下傾向
最後に、毎年紹介している「企業の東日本大震災復興支援の状況」を見ていきたい。2019年6月末時点で復興支援を「行っている」は45.7%(499社)、「行っていない」が52.0%(567社)だった。
2011年夏時点には94.7%(730社)が何らかの支援活動を行っていた。初めて「行っている」が過半数を割ったのが、2017年6月時点(2017年調査)の49.4%(492社)だった。翌2018年6月時点(2018年調査)は47.2%(498社)で、年々比率は下がっている。
復興支援の継続には、地元との関係の深さが欠かせない。東北との結び付きが強い会社中心の活動になっていくことは仕方のないことと考えられる。
現在、業績が悪化して、社会貢献どころではないという企業も多いかもしれない。だが、危機の状況にこそ、企業の本当の姿が見えてくる。リーマンショックでも東日本大震災でも、社会に必要とされる企業はその時期にできることを行っている。
例年より少し遅れて7月開始となる第16回東洋経済CSR調査では、「新型コロナ後の企業のあり方」についての特別調査を行う予定だ。通常調査と併せて、社会にとって本当に必要とされる企業を明らかにしていきたいと考えている。
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