既婚男性の「男らしさ規範」がもたらす光と影 夫・妻が借金したら、一緒に頑張るか別れるか

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自殺者数が大幅に減ったといわれる2018年の自殺統計を見ても、経済問題での男性の自殺者数は2998人、経済問題で自殺する女性434人と比較しても実に7倍近くになります。言い換えると、女性はお金を理由に自殺したりしないのです。

コロナ禍による経済活動の自粛が続けば、今後経済的に逼迫する人たちも増えるでしょう。失業者の数はリーマンショックを超えるともいわれています。もしそうなれば、2009年の男性の経済問題による自殺者数である7634人を超えるかもしれません。

失業率と男性の自殺率の関係

失業率と男性の自殺率とは、ほぼ一致に近い強い正の相関がありますが、自殺するのは失業者や無業者だけではありません。2018年実績においては、自殺した男性のほぼ半分の48%が有業のまま亡くなっています。

失業して無職になって、お金が尽きて絶望して自殺するというよりは、「なんとか頑張ろう」「まだまだ大丈夫」「俺が頑張らなくてどうする」と、自分の限界点を超えたことに気づかないまま、無理してしまった結果の自殺も多い。

彼らは、自殺したくて死んだわけではない。身体も心もボロボロになりながらも、なお最期まで必死で生きようとしていたのです。むしろ、誰よりも生きたかったと強く思っていた男性たちだったのかもしれません。

「だったら、そんなつらい男らしさ規範からさっさと降りればいいのに」という女性がいますが、男らしさにひも付いているのが経済力なのであり、そこから降りることは、結局は、本記事でデータを示したとおり、妻にも社会からも見捨てられる世界でしかないわけです。

一方で、この「男らしさ規範」が強ければ強いほど、高年収でもあり、自己肯定感や幸福度も高いということも事実です。

「笑いと叫びはよく似ている」

これは、岡崎京子さんの描いた漫画『ヘルタースケルター』での冒頭の一節です。男たちに至福の笑顔をもたらすのも「男らしさ」であり、同時に、男性たちを苦しい戦いの場へと駆り立て、絶叫のなか死へと誘うのもまた、この「男らしさ」なのです。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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