リモート実施で見えた「新人研修」の新しい形 コロナが終息したら対面に戻すべきか?

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近年、職種別・キャリア別採用を行う会社も増えてきており、複線型の導入研修を行う必要も出てきています。そのような“脱一律”の研修企画に効果を発揮することでしょう。

あるいは映像を通して自身を表現しやすいのも利点です。受講者の声としても、意見出しや議論が活発化し、対面に比べても相互コミュニケーションのストレスが少ないとの意見を何人もから聞きました。

受講者の表情なども、画面を通じて全員が共有することができるので、緊張感が維持できる。それだけ集中力が求められるので疲れるとの意見もあったくらいです。こうした利点があるなか、またゼロに戻すのはもったいないとしか言いようがありません。

リモート型・集合型のハイブリットで導入研修を

集合研修開催の前後にリモートによるグループワークを設定して、理解と親睦を深める。理解度を高めるテストをリモートで開催。その成績に応じた補習やオプション講義はリモートで行うといった形の導入研修など。さまざまなバリエーションが考えられます。

もちろん、長年行われてきた集合研修にはそれなりの利点があるから続いてきたといえます。ただ、受講者の参加態度が受動的になってしまうとか、集中力が続かないなどの問題もありました。

自身も研修講師を行ったことが何回もあり、問題に直面したことがあります。受講者の表情を確認しながら講義内容をアレンジしたいと思うのですが、短時間でそこまではなかなか読み取れない。眠そうでモチベーションが低い受講者がいても、十分にケアすることもできない。そんなジレンマを感じたことがありました。

一方、リモートであれば受講者の顔をまんべんなく見ながら講義を行うことも可能になります。反応を見ながら、指名してコメントを求めることも容易です。

リモートで導入研修を行った講師に聞くと、まんべんなく指名してコメントする機会を作ることで緊張感が保たれ、学習成果が高まるようです。

ただ、講師には、新たなスキルも必要かもしれません。対面ともまた違う、リモートならではのファシリテーション力はそのひとつでしょう。集合型のように同じ場にいないだけに、その場の空気を読んで受講者の発言を仕切るのも容易ではありません。

全員の顔が見えてはいるのですが、話をどこで終わりにすべきか、空気感でタイミングを見極めるのが難しい、という傾向もあります。「以上ですね」と終わらせる判断力が必要になります。

複数の意見をとりまとめる工夫も必要になります。書き込めるツールを活用してとりまとめていく方法を開発することも大事になるでしょう。例えば、Microsoft WhiteboardやLimnuなどオンラインホワイトボードのツールが数多く登場しています。参加者が考えていることを手書きで書き込めるので、集合型のようなライブ感のある研修を行うことが可能です。

このようにリモートの研修には新たな準備も必要ですが、得られる研修効果を考えれば活用を続けない手はありません。来年以降はハイブリッドで導入研修をすすめてみてはどうでしょうか。単に従来の集合研修に戻るというのではなく、これを機会にリモートで行うべきことと集合で行うべきことをしっかりと見極めて、効果の高いやり方を実現していきましょう。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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