日系車メーカーが中国の規制を達成できない訳 乗用車メーカーに求められる新エネ車の生産

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中国では販売価格30万元以上の車両が高級車と定義され、ドイツ系メーカー、テスラ、新興メーカーNIOが主に同価格帯車種を販売している。電池交換式を採用したNIOは規制対象外であるものの、その他メーカーは戦略車種を30万元以下に値下げする可能性がある。

それは、日系のミドルエンドのEVブランドだけではなく、地場のEVメーカーに対する大きな脅威になる。「EVの価格がガソリン車のメイン価格帯に突入すればEVシフトが加速するはずだ」と、新興EVメーカー小鵬汽車の夏珩総裁は語った。

再編を進めたい政府の意向?

次に、台数条件では乗用車1万台、商用車1000台単位でのみ申請が可能である。実際、2019年に補助金を申請した乗用車メーカー66社のうち、NEV生産台数1万台未満のメーカーが48社に上った。

また商用車メーカー141社のうち、NEV生産台数1000台未満のメーカーが119社となり、メーカー乱立の様子も露呈している。生産規模の小さいNEVメーカーにとっては不利な条件ということもあり、メーカー淘汰を加速させたい政府の意向が垣間見える。

中国工業情報省は2020年4月に、NEV参入基準を修正し、現行規定で求めている製品の設計・開発能力を削除し、技術ハードルを引き下げた。あわせて、メーカーのNEV生産停止を容認する期間は12カ月から24か月に延ばし、メーカーにとっては経営改善の猶予が与えられた。新車市場が減速している中、規制緩和が実効力を持つ新興NEVメーカーの持続的成長にプラス効果をもたらすといえそうだ。

中国政府が2019年から導入したNEV規制では、航続距離などの性能評価に基づき、今年から乗用車生産・輸入台数の12%相当分が「NEVクレジット」として計算される。

例えば乗用車メーカーがガソリン車100万台を生産する場合、今年発生する12万クレジットを確保するには、すべてをEVの生産で対応するならばEVを2.4万台(航続距離400kmであれば1台当たり5クレジット)、すべてPHVならばPHVを12万台(航続距離50km~80kmであれば1台当り1クレジット)生産しなければならない。

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