日系車メーカーが中国の規制を達成できない訳 乗用車メーカーに求められる新エネ車の生産

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日系自動車メーカーは中国でガソリン車を主力に据えながら、電池性能やインフラ整備など不確実性の高いEV市場を慎重に見極めていく方針を取っていた。

だが、規制に対応するために中国でEVを生産せざるをえないことから、各社は規制対応だけのクレジット分を中国で生産するという戦略を実施しているとみられる。結局、消費者ニーズに適応する電動化車両を投入しなければ生産・販売の増加につながらず、規制対応も難しくなっている。

2020年4月に発売されたEV「C-HR」は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームを採用したトヨタ中国初のEVだ。また、レクサスブランド初のEV量産車UX300eの投入など、トヨタは中国でEV攻勢をかけている。

迫られる日系企業の差別化戦略

一方で、ドイツのVWは今年40億ユーロを中国市場に投資し、世界初のMEB(EV専用プラットフォーム)をベースにしたEV「ID.3」を生産する。

1~4月の中国市場で販売好調だったテスラの「モデル3」(筆者撮影)

アメリカのテスラはEV最大生産能力50万台を誇る巨大工場「ギガファクトリー3」の稼動を皮切りに、中国市場の攻略に向けスタートを切った。2020年1~4月のテスラモデル3の販売台数は1万9705台となり、長年中国EV市場上位を占めた地場ブランドを抜きトップ車種となった。

新型コロナウイルスの影響で欧米主要自動車市場の回復が見通せない中、中国市場が大いに期待されている。中国では消費マインドが低下し、口コミや乗車体験など、時間をかけて慎重にEVを選ぶ中国消費者が増えている。

現在、中国でブランド力の高い欧米メーカーはコストパフォーマンスの高いEV車種を投入し、市場シェアの拡大を図ろうとしている。今後、自動車メーカーの中国市場依存がこれまで以上に進むことになり、EV市場競争の激化も想定される。

日系企業にとってはいかに内燃機関車と電動車のすみ分けをしながら、他社EVとの差別化戦略の取り組みが求められている。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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