日本製鉄が大赤字、傷口に塩を塗り込むコロナ 自動車向け急減、建設工事の停止で異常事態

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日本製鉄の場合、バンキングする6基の生産能力は全体の3割。そのほかの高炉でも生産調整を行い、なんとか需給バランスを保っている。日本製鉄、JFE、神戸製鋼所とも2021年3月期の業績見通しを公表していないが、黒字確保は限りなく難しいのが実情だ。

鉄鋼大手が厳しいのは、コロナ前から事業環境が著しく悪化していたからだ。コロナの影響がわずかだった2020年3月期、日本製鉄は4315億円、JFEは1977億円、神戸製鋼は680億円のいずれも最終赤字となった。

赤字に陥った要因は2つある。1つは、米中貿易戦争に端を発した世界経済の失速で鉄鋼需要が落ち込んだこと。自動車用を中心とした数量の減少に加え、市況の影響を受ける建設向けや輸出向け鋼材価格が下落した。にもかかわらず、鉄鉱石など主原料価格は高止まりしたことで採算が悪化した。これがもう1つの要因だ。その結果、鉄鋼事業の一部資産の減損も余儀なくされ、赤字額が膨張した。

不況でも原料価格は下がらない?

こうした背景には鉄鋼産業の構造問題がある。世界の粗鋼生産は年間約20億トン弱に対して、中国は約10億トンを占める。世界的な鉄鋼需給が悪化する中で、原料価格が高止まりしたのは、中国政府の景気対策を受けて現地メーカーが過去最高の生産を行ったからだ。

コロナで悪化した経済のテコ入れに中国政府が動けば、現地メーカーの”活発”な生産は変わらず、中国以外のメーカーにとっての「原料市況高・鉄鋼市況安」は続く。そのうえ、原油価格の下落で油井管などの資源関連、成長期待が高かった新興国向けなど全体需要は当分回復しそうにない。

コロナが収束しても事業環境の劇的な好転は見込みにくい。相対的に堅調な中国大手の競争力が高まることは間違いないからだ。そのまま中国国内の需要が強ければ、原料市況は高止まる。逆に中国国内の需要が減少に転じれば、その巨大な生産能力が本格的に輸出に向かうことになる。いずれにしても逆風はやみそうにない。

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