法人減税の機運は高まっている 政府税制調査会法人課税DGの大田弘子座長に聞く
――しかし、消費税の上がるタイミングで法人減税といえば、国民には「家計を犠牲にして企業を優遇する」という風に見えませんか。
だから法人減税は難しい。よく「企業に優しく、家計に冷たい」と言われるが、なぜいま法人減税かと言われると、安倍首相のイニシアティブだ。首相が設備投資減税を最初に言って、法人税率も見直すと言った。昨年の自民党税調の答申にも書き込まれた。そして、ダボス会議で、国際相場に照らして(法人税を)競争的なものにする、と発言した。これはグローバル化を完全に意識したもの。これが出発点だ。
いまほど(法人減税について)機運が高まっているときはない。経済財政諮問会議でも議論が始まっている。安倍首相のダボスでの発言は大きい。
法人減税は恒久減税なので恒久財源が必要
――海外のケースはどの程度参考になるのでしょうか。
米国のレーガン政権の税制改革が有名だ。レーガン大統領は1981年の第1期税制改革で、設備投資減税や減価償却のやり方を変える、いわゆる政策税制を導入した。1986年の第2期税制改革では、法人税率を(46%から34%へ)思い切って12%下げた。この改革が90年代に入って、IT関連の新しいビジネスが興る素地になった。
ドイツの法人税改革も参考になる。東ドイツと統合した時に、ビジネスコストが高く、雇用が失われるのではないかという危機感から、当時の西ドイツは法人税率を下げた。ドイツは2008年度には、法人税率を39%から30%に下げている。その際に、支払利子の損金算入制限を行うなど、課税ベースを広げて財源をつくりながら、実施した。
法人税改革は成長のために行う。1兆円減税するために1兆円をどこかから持ってこないといけないのでは(改革は)できない。ただ、財源のあてがまったくないまま議論するわけにはいかない。これ(法人減税)はやはり恒久減税なので、恒久財源が必要だ。