リクナビ「エントリーあおり」の実態とは? 揺らぐ“就活サイトナンバーワン”ブランド

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「内定獲得した先輩に追いつく!」と称したグラフは、就活生からの「エントリーの目安はどれぐらいか」「結局、どうすれば内定にたどり着けるのか」という声に応えるためという。過去のリクナビのユーザーデータなどから、利用者と似た傾向にある先輩などの活動履歴を分析するビッグデータを生かして提供しており、数字は一人ひとり異なるという。

就活のWeb化で大量エントリーが増え、就職ミスマッチが増えたという指摘は否定する。「ひとりの就活生が応募書類(エントリーシート)を書ける量は限られている」(元リクナビ編集長で、同社就職みらい研究所の岡崎仁美所長)ためで、応募数自体は、紙主体だった時代とそれほど変わっていないという。

人事担当者の評価に響く「エントリー数」

「多くの企業を研究してほしい」と言っても、一度に100社にエントリーできる機能を乱立させるのはやり過ぎではないだろうか。市場環境とリクナビのビジネスモデルを照らし合わせると、リクナビがエントリーを“あおらざるをえない”状況も見えてくる。

リクナビは、新卒採用企業から情報掲載料を受け取って収益を上げている。掲載費は基本料金だけで120万円。オプションを加えると200万~300万円と、費用は天井知らずだ。大金をかけて求人広告を掲載する企業は、多くの就活生に自社の採用情報を見てもらい、エントリーしてもらうことを期待する。エントリー数を保証したり、エントリーごとに課金しているわけでないが、エントリー数はリクナビの“商品力”を左右する重要なファクターだ。

実際、企業の採用担当者向けのPRサイトには、「100人規模のわが社に1089人からのエントリー。驚きました」「リクナビの確かな実績でエントリー数最大化」など、リクナビを使えばいかにエントリー数を稼げるかを強調。岡崎所長も、「(エントリーの)母集団を集めたいというニーズが企業側にあることは確か。母集団が集まらない企業に、学生の視野を広げて向かせたいという思いはある」と認める。

だが、今の市場環境で、学生のエントリー数を稼ぐのは簡単ではない。景気回復の影響もあり、ナビサイトへの登録社数は激増(「リクナビ2015」の2013年12月時点の登録社数は前年比26%増、「マイナビ2015」は前年比53%増)。1社当たりの採用予定数も増えている一方で、少子化の影響で新卒の学生数は横ばいから微減にとどまる。つまり、学生1人当たりのエントリー数を急拡大させないかぎり、1社当たりのエントリー数を横ばいに持ってくることすらできない。

新卒者という供給は拡大しないのに、需要が激増するという市場環境の中、リクナビが登録企業に対し、エントリー数という「掲載効果」を返すには、学生に大量にエントリーさせる「一括エントリー」を強調する必要があったのでは――そんなふうにも考えられる。

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