リクナビ「エントリーあおり」の実態とは? 揺らぐ“就活サイトナンバーワン”ブランド

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採用活動を行う人事担当者の社内評価が、エントリー数の多寡で決まるケースも少なくないという。本来は、採用した人材の働きぶりで評価するべきだが、結果が出るまで数年かかり、評価基準も難しい。一方で、エントリー数なら短期で結果が出、数字というわかりやすい指標で評価できるため。「エントリー数で判断して褒められる、出世するという構造があるかぎり、今後も事態は変わらないのでは」と、関係者は打ち明ける。

就活サイトを使うのは「負け組」?

ここ数年は、就活生・企業とも“就活ナビ離れ”が進んでいるといわれる。就活生のリクナビ登録率は例年100%に近く、下がってはいないのだが、その依存度は低下しているようだ。

今回、筆者が話を聞いた2012~14年卒生7人のうち5人が、「そもそもリクナビをほとんど使わなかった」と話していた。リクナビ経由でないと応募できない企業があるため、登録はするものの、就職先選びには使わなかったという。

彼らの就活ルートは、(1)大手や知っている企業だけを受ける、(2)アルバイト先のWeb企業などにそのまま就職、(3)先輩や同級生が受けた企業を受けた、(4)インターン先の企業にそのまま内定した――など。資料請求してエントリーし、面接を受ける――という“普通の就活”の枠から離れた採用形態が増えているようだ。

「本当に優秀な学生は就活サイトを使わずに、夏季インターンなどで青田買いされたり、学生時代のイベントなどでヘッドハンティングされていました。そうした事例をみていたので、就活サイト経由で就活する時点で、ある種“負け組”感があると思っていました」(13年卒・男)。

この傾向は、企業の就活ナビ離れの裏返しでもある。ただでさえ万単位のエントリーが届く人気企業は、就活ナビサイトを利用すると、さらにエントリーが増えてさばききれなくなったり、志望度の低い学生に応募されるなどデメリットが大きい。このため、自社サイトのみの採用に切り替えるなど、ナビサイトに頼らない採用手法にシフトしている。

ドワンゴもそんな企業のひとつだ。就活サイトからの一括エントリーなどでひとりの学生が数多くの企業の採用試験を受けられる状況の中、「採用の手間ばかりが増えて、本当に必要な人材を見極める十分な時間をかけることが難しい」とし、志望者を絞り込むために2525円の受験料を徴収するなど、新しい採用の形にチャレンジしている。

揺らぐ「就活サイトナンバーワン」

学生を“指名買い”できるのは、都内を中心とした大手企業やトップ企業に限られており、都内の企業のインターンやアルバイトに参加できるのも、都内近郊の学生に限られるという側面もある。筆者が話を聞いたうち、「リクナビをほとんど使っていなかった」と答えたのは、都内の有名大学を出て、都内で就職した人だった。

「就活は“動く人”と“動かない人”で二極化している」と岡崎所長は指摘。リクナビの就職支援機能は「動かない、動けない人向けのお手伝い」だという。過剰なまでのエントリー推奨は、「動かない、動けない人」向けに設計されており、「動き方を知っていて、すでに動いている」人にとってはうっとうしく映っていた面もあるだろう。

ただ、リクナビ上でまったく活動していない段階から、「あなたの行動・志向にあわせておすすめ100社をピックアップ」と表示されるなど、メッセージと実際の機能にズレがあったり、エントリー数をあおるグラフなどは、表現が行きすぎだったことは否めない。「Webの世界ではスタンダードなコミュニケーションでも、就職活動のシーンで本当にそれでいいのか、コミュニケーションを磨く余地がある」(岡崎所長)。

就活ナビサイトのあり方そのものが問われている中、リクナビは2015年版で初めて、ライバルのマイナビに掲載企業数で抜かれ、“就活サイトナンバーワン”の座も揺らぎつつある。安易なエントリー数稼ぎに走らず、就活を本当の意味で支援するサイトになれるか――あらためてその姿勢が問われている。

(※一部機能について記述に不正確な点があったため、該当箇所を一部修正、削除いたしました。)

岡田 有花 フリーライター

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おかだ ゆか / Yuka Okada

1978年、兵庫県生まれ。京都大学教育学部卒。IT系ニュースサイトITmediaの記者、Webベンチャーnanapiの編集者を経てIT・Web分野を中心に取材、執筆するフリーライター。

ITを切り口に、人の心、そして社会の有り様にまで踏み込み、取材される側の信頼を獲得してこそ書ける記事を執筆する。また、時に見せる体当たり記事の潔い姿でも名高い。

著書『ネットで人生、変わりましたか?』
(2007年、ソフトバンククリエイティブ)も刊行している。
Twitter @yukatan

 

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