「検察庁法改正案」今さら聞けない大論争の要点 「#抗議します」500万件の裏にある誤解と好機

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検察庁法には、検察官が政治的に独立していることを保障する象徴的な条文がある。「法務大臣は、第4条及び第6条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。ただし、個々の事件の取調又は処分については、 検事総長のみを指揮することができる」と定める検察庁法14条だ。

法務大臣は一般的な指揮監督権(一般的な法解釈に関する指示や事件に関する処理報告を受けることにとどまる)を有するが、個々の事件の取調べや処分(起訴・不起訴処分を含む)については原則として立ち入ることができない。立ち入る場合(いわゆる「指揮権発動」)であっても、検事総長がその対象になる。歴史上、公式に指揮権が発動されたのは造船疑獄事件のみであるが、それ以外にも事実上検事総長は法務大臣や内閣と対峙する場面がこれまでにも見られてきた。

権力は暴走する、検察権も例外ではない

当然ながら、権力は暴走する。それは検察権も例外ではない。国民を刑事訴追することができる強大な権利が暴走すること、その恐ろしさは想像に難くない。民主的に選ばれていない検察官が恣意的に国民を刑事訴追していくというストーリーも法は想定しなければならない。ここに、民主的に選ばれた人間(内閣)による監視・牽制(いわゆる「シビリアン・コントロール」)関係を構築することは、歴史が学んできた解決策なのだ。

今回の法改正は、まさに内閣と検察がどのような牽制関係を維持すべきなのか、適切なシビリアン・コントロールをいかに実現するのか、という憲法論にも発展し得る論点を、人事権という側面から問うものである。「介入すべきである」「介入すべきでない」という、0か1の議論ではなく、どのような要件で、範囲で権利行使をお互いに認めれば、バランスの取れた刑事行政が可能なのかを考える、グラデーションのある問いなのだ。決してそこに一義的な「正解」はない。

専門家の役目は、たくさんある複雑な要素の絡み合いをしっかりと整理し、適切な疑問、不安、意見を国民や当事者たちが抱けるようにすることだ。この点は法律家も医者も科学者も変わらない。新型コロナウイルスをめぐる対応について私が専門家に求めたことを、この法案については法曹の端くれとして私も求められる役割を果たしたい。

そして、あえて付言すれば、いま立法府に提出されている段階の法案について、国民には闊達な議論をするチャンスがあると思っていただきたい。いまはまさに与党も野党も、国民がどう考えているのかを確認するフェーズだ。それぞれが抱く漠然とした不安は、政治家や専門家が伝える整理によって少しずつ明瞭な疑問へと発展していくだろう。自らが納得のいく意見を持てたら、その際はぜひ意見を聞かせていただきたい。民主主義はそれによって大きく発展していくと筆者は強く信じている。

徐 東輝 弁護士(法律事務所ZeLo・第二東京弁護士会所属)

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そぉとんふぃ / Tonghwi Soh

1991年大阪生まれ。企業法務に従事する傍ら、良質な情報空間の情勢と民主主義の発展のために、NPO法人Mielka代表としても事業を展開する。

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