鉄道「上下分離方式」はコロナ禍の苦境を救う 欧州で一般的、日本でも採用例が増えてきた

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そんな中で群馬県は異なる手法を選んだ。鉄道事業者が施設を所有する第1種鉄道事業を維持しつつ、沿線市町村とともに近代化のための投資や施設維持費用、固定資産税などを負担する手法を、上毛電気鉄道に1998年、上信電鉄に翌年導入した。

昔から存在する支援に近い内容であるが、自治体が施設を保有しているとみなして経費を負担することから「みなし上下分離」、群馬県が編み出した手法ということで「群馬型上下分離」などと呼ばれることもある。

なお軌道(路面電車)については、2007年に施行された地域公共交通活性化・再生法で上下分離方式が認められた。そのため前年に開業した富山ライトレール富山港線は「みなし上下分離」という状況であり、2009年に開通した市内電車環状線が、路面電車として初の上下分離になった。こうした経緯を見ると、富山港線が上下分離したのは当然の帰結に思えてくる。

鉄道の経営再建に積極活用を

鉄道は施設の維持管理に多大な費用がかかり、人口減少や少子高齢化という社会変化の中で経営の重荷になっている。

京都丹後鉄道は北近畿タンゴ鉄道の運行部分を引き継いだ(筆者撮影)

国や自治体からの支援に頼る形態では、経営努力により赤字が圧縮されるとその分支援も減少することが多い。上下分離方式を導入すれば、施設の維持管理という重荷から解放されることで、経営努力によって利益が生じれば、それを投資に回すことができるというメリットも生まれる。

公共交通のライバルとして名前が挙がることが多いマイカーは、国や地方自治体などが整備した道路の上を走る。つまり当初から上下分離方式である。それを考えれば、鉄道の上下分離も当然の手法ではないかと思えてくる。新型コロナウイルスの影響で鉄道事業者はどこも厳しい状況に置かれている。経営再建のためツールとして積極的に活用してもいいのではないだろうか。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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