鉄道「上下分離方式」はコロナ禍の苦境を救う

欧州で一般的、日本でも採用例が増えてきた

神戸市内に分散してあった阪急電鉄(当時は京阪神急行電鉄)、阪神電気鉄道、山陽電気鉄道、神戸電鉄(当時は神戸電気鉄道)のターミナルをつなぐ形で神戸高速の東西線と南北線が開通したのは1968年。会社はその10年前に設立されており、第3セクター鉄道としてもいち早い存在だった。

神戸高速は線路や施設の保有や駅の運営に専念し、車両は所有せず、運行は行わなかった。そのため当時は「トンネル会社」と呼ばれることもあった。

阪急神戸高速線。神戸三宮まで山陽電鉄が乗り入れている(筆者撮影)

その後、神戸市が保有株式の一部を阪急阪神HDに売却し、阪急阪神HDが株式の過半数を所有することになった。駅の運営も乗り入れる鉄道事業者が行う形に変わったが、施設は現在も神戸高速が保有する。

この間、1987年の国鉄分割民営化・JRグループ誕生に合わせて施行された鉄道事業法で、鉄道事業の営業主体と線路の所有主体の分離が認められた。従来からある上下一体方式は第1種鉄道事業、営業に専念するのは第2種鉄道事業、路線の所有のみを行うのは第3種鉄道事業と呼ぶようになった。

全国の貨物輸送を担当するべく生まれた日本貨物鉄道(JR貨物)が、自社の路線をほとんど持たず、旅客鉄道6社に線路使用料を支払い列車を運行する形になったことが、法制化の理由と言われている。

新規路線で相次いで採用

ともあれ法律で明文化されたことで、その後東日本旅客鉄道(JR東日本)や京成電鉄の列車が成田空港へ乗り入れるべく作られた成田空港高速鉄道、西日本旅客鉄道(JR西日本)東西線が走る関西高速鉄道など、第3セクターの第3種鉄道事業者設立による新路線開通が相次いだ。

一方地方では、もともと経営面で厳しい鉄道が多かったこともあり、再建などの過程で沿線自治体が第3種鉄道事業者になり、新たに組織された第3セクターが第2種鉄道事業者として運行する上下分離方式が増えている。

両備グループが運行する和歌山電鐵の車両(筆者撮影)

東北新幹線の開業に伴う並行在来線の転換により誕生した青い森鉄道、近鉄のナローゲージ路線だった内部・八王子線を転換した四日市あすなろう鉄道、南海電鉄貴志川線を引き継いだ両備グループの和歌山電鐵などがここに該当する。

廃止が議論されていたJR路線を存続させるべく第3セクターに移行した事業者の中にも、上下分離に移行した事例がある。北近畿タンゴ鉄道は経営改善の観点から民間資本の導入を公募し、高速バスの運行で有名なWILLERグループのWILLER TRAINSが第2種鉄道事業者となり、京都丹後鉄道の名称で運行を始めている。

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