鉄道「上下分離方式」はコロナ禍の苦境を救う 欧州で一般的、日本でも採用例が増えてきた

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多くの公共交通改革と同じように上下分離方式という言葉もまた、欧州から広まった。欧州でのパイオニアはスウェーデン国鉄(SJ)と言われている。

我が国の旧日本国有鉄道同様、SJの経営もモータリゼーションの影響を受けて経営状況が悪化していた。しかもその後、スウェーデンの欧州連合(EU)加盟も議論に上るようになり(実際の加盟は1995年)、国際化への対応や競争力の強化も重要になりつつあった。

複数の運行事業者が乗り入れるスウェーデンのヨーテボリ中央駅(筆者撮影)

そんな中でスウェーデンでは1988年の交通政策法に基づき、鉄道改革を実施した。ここで運行事業を担当する新SJと、線路や施設を保有し維持管理を行うスウェーデン鉄道庁(BV)への上下分離が決まった。さらにSJ以外の事業者の線路使用を認めるオープンアクセスも導入された。

その結果、たとえばスウェーデン第2の都市であるヨーテボリの中央駅には、ヨーテボリを含むヴェストラ・イェータランド県の公共交通運行事業者であるヴェストトラフィークが運行する通勤電車ヴェストトーゲンや、香港に本拠を置くMTRの子会社が首都ストックホルム―ヨーテボリ間で運行するMTRエクスプレスなどが乗り入れている。

都市交通の場合

都市交通においても、国や地域により形態はやや異なるものの、上下分離と言える体制を取っているところが多い。

ヨーテボリ市内を走るトラム(筆者撮影)

前述したヴェストトラフィークは、ヨーテボリのトラム事業者や複数のバス・フェリー事業者を管轄する立場にあり、隣国フィンランドの首都ヘルシンキではヘルシンキ地域圏交通政策局(HSL)が周辺都市を含めた交通事業の管理を行い、ヘルシンキ市交通局(HKL)が地下鉄と路面電車の運行などを行う。

いずれにしても、欧州は国の鉄道も都市交通も単一事業者が管理し、その中で上下分離方式を導入している事例が多い。日本のように国の鉄道が分割民営化され、ひとつの都市の鉄道を多くの民間事業者が管理するところはほとんどない。

ただし、第三者が保有する線路上でほかの鉄道事業者が列車を運行する方式は、スウェーデンより前から我が国に存在していた。以前記事(2017年10月12日付記事「知られざる大動脈『神戸高速線』はどう変わる」)で紹介したこともある神戸高速鉄道だ。

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