通勤電車の「密」、乗車率何%なら避けられるか ソーシャルディスタンス確保にはまだ届かず
東京メトロ東西線を例にとって試算すると、1両当たり定員40人であればラッシュピーク時1時間当たりの輸送力(10両編成×27本)は約3万8450人分から約1万800人分に減る。通常時の利用者数は約7万6700人。「1m空き」を維持するためには、利用者数は通常の7割減でもまだ多く、計算上は86%以上減らなければ達成できないことになる。
一方、ピークを避けた時間であれば、接触の機会を避けられる可能性は多少なりとも高まる。東京圏主要31路線のピーク前後各1時間の混雑率を示した国交省の資料によると、各線ともピーク前後の混雑率は比較的低く、例えば東西線のピーク直後1時間の混雑率は126%と、最混雑時より約70ポイント低い。
乗車時間や出勤時間を調整できるなら、利用者側の自衛策として少しでも空いている時間帯を狙って乗るしかないだろう。もっとも、多くの人が同じ時間帯にシフトしてしまえば効果は薄れる。
ピーク時はさらに利用抑制を
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、通勤電車は密閉・密集空間ではあるものの、会話が少ないことから「3密」すべての条件には該当しないとの見方を示している。今のところ、電車内がクラスターとなった事例は報告されていない。
だが、過去には新型インフルエンザの感染拡大抑制策として、前述のように車内での乗客同士の間隔を維持した場合の定員などが試算され、パンデミック時の輸送力などについても検討されていたことは事実だ。新型コロナウイルスについても、鉄道輸送による感染拡大を防ぐ具体的な方策の検討が必要だろう。
都市部で生活する人々にとって通勤鉄道は必要不可欠な存在だ。緊急事態宣言の解除後もテレワークはある程度浸透するとみられ、ラッシュも以前ほどの混雑には戻らないかもしれないが、今後も新型コロナは第2・第3の波が来ることが予想される。
通勤についても「新しい生活様式」を提唱するのであれば、ピーク時の利用をなるべく抑えて少しでも「密」を減らすことができるよう、利用者への「お願い」や鉄道会社による対策だけに頼らない取り組みが必要だ。今こそ本気で「満員電車ゼロ」が求められている。
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