通勤電車の「密」、乗車率何%なら避けられるか ソーシャルディスタンス確保にはまだ届かず

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東京メトロも、全駅の改札通過者数が対前年比で何%減ったかの数値を公開している。こちらも4月13~17日の利用者数は66%~71%減だったが、5月7・8日はそれぞれ67%・69%減と、大型連休後は乗客がやや増加傾向にあることがわかる。

では、乗客数が6~7割減った際の「混雑率」はどの程度になるだろうか。

鉄道の混雑率は、1時間当たりの利用者数を輸送力で割った数値だ。2018年度の国土交通省データによると、首都圏で最も混み合う東京メトロ東西線の場合、最混雑区間である木場駅―門前仲町駅のピーク時1時間(7時50分~8時50分)の利用者数は約7万6700人、輸送力は約3万8450人分(10両編成×27本)で、混雑率は199%だ。利用者数が69%減ると約2万3777人となり、混雑率は約62%まで下がる。

東西線車両の定員は、最新の「15000系」中間車両だと154人で、うち座席定員は44人(車いすスペースのない車両の場合)。混雑率62%は座席がすべて埋まり、車内中央やドア付近に約50人が立っているという状態だ。

一方、混雑率が133%と都内の地下鉄で最も低い都営浅草線の場合、利用者数が63.9%減少すると混雑率は約48%。同線の最新車両「5500形」中間車両の定員は134人、うち座席定員45人のため、全席が埋まり、そのほかに20人程度が立っている状態だ。こちらは一見して「空いている」と感じられるかもしれない。

社会的距離の確保には遠い

ただ、平常時と比べれば利用者数が減っているとはいえ、通勤時間帯は感染防止に重要とされるソーシャルディスタンスの確保にはまだ遠い。そもそも、通勤電車は乗車率100%=定員の状態でも、新型コロナの感染が広がる現在の感覚でいえば十分に「密」といえる。

国交省国土交通政策研究所が2011年にまとめた「通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」は、電車内の感染防止のために乗客同士の間隔を空けた場合の輸送力を推計している。

同研究は、乗客同士の間隔を1m空けた場合として座席を1つおきに使い、立客はドアの前のみとした際の乗車人数を、首都圏の鉄道で標準的な1両の長さ20m・ロングシートの車両で40人、やや短い18m車両の場合は34人としている。

この乗車人数を維持しようとすると、ラッシュ時の利用者数は7割近く減少している現状よりもさらに減らす必要がある。山手線や中央線など、首都圏のJR線を走る標準的な通勤電車の定員は1両当たり160人ほど。1m間隔を保つために乗客を40人に制限すると、定員の4分の1しか乗れないことになる。

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