コロナ禍の「アルコール依存」から身を守る方法 健康や家庭を壊さない飲酒習慣の基礎知識

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「コンビニで買った500円くらいのワインを、夜に1本開けて、酔っ払って眠ります。朝起きたらコンビニに行き、またワインを買って飲み干して寝る。夜に起きてまたワインを……そんな繰り返しです。ウイスキーを飲むこともありますが、1瓶を1~2日で開けるのが当たり前。さすがに自分でもやばいと思っています……」

このように、明らかにアルコール摂取量が増えたという人が少なくない。いったいその危険性をどう理解し、対策をしたらいいだろうか。アルコールなどの依存症対策に取り組む、特定非営利活動法人アスクの代表・今成知美さんに聞いた。

免疫力の低下や家庭崩壊の危機も

――新型コロナの影響で、家からなかなか出られない状況が続いています。今、お酒に関する悩みは増えていますか?

今成知美 特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)代表 1979年、東京芸術大学卒。フリージャーナリストとしての仕事のかたわらASKの立ち上げに参加、1984年に代表となる。1985年、季刊『アルコール・シンドローム』(のちに『Be!』と改題)を創刊、編集長に。予防教育に取り組み、アメリカ・オーストラリアでの視察研修をもとに、小学生から大学生までを対象とした、参加型の「ASKプログラム」を構築。1991年からは大学向けのイッキ飲み防止活動も開始。超党派議員立法によるアルコール健康障害対策基本法の制定に奔走。2014年の同法施行後、内閣府のアルコール健康障害対策関係者会議委員(教育・誘引防止・飲酒運転等ワーキンググループ座長)として、アルコール健康障害対策推進基本計画の策定に関わる。

過去、大きな災害の後に、アルコール依存症の人が増える傾向がありました。阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震のときもそうでした。被災していない方も、自粛ムードを受けて家にこもるようになり、お酒好きの方はつい酒量が増えてしまうのです。

今回は災害ではありませんが、それ以上に影響がある状況です。外出できないだけでなく、自粛要請がいつまで続くかわからないため、人々のストレスはたまる一方です。こうしたとき、アルコール依存症になる危険は高まります。

会社員の方は、リモートワークに切り替わる人が多く、「何時に出社する」「人に会うのでお酒の匂いをさせたらまずい」などの制限がなくなるため、飲酒の歯止めが効きにくくなりがちです。定年退職した後に、朝からお酒を飲む人が増える傾向がありますが、それに近い状況になってしまいます。

――アルコール依存症や、依存症になってしまう恐れがある人は、どれくらいいるのでしょうか。

現在、アルコール依存症に該当するのは約100万人ですが、疑いがある予備軍は約300万人います。さらに依存症や健康被害だけでなく、深酒による暴言や暴力、ネグレクト、翌朝の飲酒運転などにつながるような、多量飲酒をしている人は約1000万人います。こういった人たちが、コロナを機に、一気に飲酒量が増えてしまう危険性があります。特に今は、アルコール度数の強いお酒が、コンビニなどで安く手軽に買えてしまうので、注意が必要です。

アルコール摂取量が増えると、免疫力が低下します。さまざまな病気にかかる可能性が高まりますし、今ですと、新型コロナウイルスへの影響も心配です。運動不足にもなるので、健康面にも大きな悪影響が出ます。喫煙をしている方はなおさらでしょう。

家族で暮らしている方は、周囲に大きなストレスを与えてしまいます。昼からお酒を飲んでいるのを、心配した家族がやめさせようとして、ケンカになってしまうかもしれない。子どもの前で怒鳴りあいや暴力が始まることも。家庭崩壊につながりかねません。

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