「コンビニで買った500円くらいのワインを、夜に1本開けて、酔っ払って眠ります。朝起きたらコンビニに行き、またワインを買って飲み干して寝る。夜に起きてまたワインを……そんな繰り返しです。ウイスキーを飲むこともありますが、1瓶を1~2日で開けるのが当たり前。さすがに自分でもやばいと思っています……」
このように、明らかにアルコール摂取量が増えたという人が少なくない。いったいその危険性をどう理解し、対策をしたらいいだろうか。アルコールなどの依存症対策に取り組む、特定非営利活動法人アスクの代表・今成知美さんに聞いた。
免疫力の低下や家庭崩壊の危機も
――新型コロナの影響で、家からなかなか出られない状況が続いています。今、お酒に関する悩みは増えていますか?
過去、大きな災害の後に、アルコール依存症の人が増える傾向がありました。阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震のときもそうでした。被災していない方も、自粛ムードを受けて家にこもるようになり、お酒好きの方はつい酒量が増えてしまうのです。
今回は災害ではありませんが、それ以上に影響がある状況です。外出できないだけでなく、自粛要請がいつまで続くかわからないため、人々のストレスはたまる一方です。こうしたとき、アルコール依存症になる危険は高まります。
会社員の方は、リモートワークに切り替わる人が多く、「何時に出社する」「人に会うのでお酒の匂いをさせたらまずい」などの制限がなくなるため、飲酒の歯止めが効きにくくなりがちです。定年退職した後に、朝からお酒を飲む人が増える傾向がありますが、それに近い状況になってしまいます。
――アルコール依存症や、依存症になってしまう恐れがある人は、どれくらいいるのでしょうか。
現在、アルコール依存症に該当するのは約100万人ですが、疑いがある予備軍は約300万人います。さらに依存症や健康被害だけでなく、深酒による暴言や暴力、ネグレクト、翌朝の飲酒運転などにつながるような、多量飲酒をしている人は約1000万人います。こういった人たちが、コロナを機に、一気に飲酒量が増えてしまう危険性があります。特に今は、アルコール度数の強いお酒が、コンビニなどで安く手軽に買えてしまうので、注意が必要です。
アルコール摂取量が増えると、免疫力が低下します。さまざまな病気にかかる可能性が高まりますし、今ですと、新型コロナウイルスへの影響も心配です。運動不足にもなるので、健康面にも大きな悪影響が出ます。喫煙をしている方はなおさらでしょう。
家族で暮らしている方は、周囲に大きなストレスを与えてしまいます。昼からお酒を飲んでいるのを、心配した家族がやめさせようとして、ケンカになってしまうかもしれない。子どもの前で怒鳴りあいや暴力が始まることも。家庭崩壊につながりかねません。
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