今のままではトランプが負けるこれだけの理由 コロナで劣勢の陣営に「逆転策」はあるのか

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今、巷では「コロナはソ連崩壊につながったチェルノブイリ原発事故と同じだ。中国共産党もソ連崩壊と同じ運命をたどる」と煽る人もいる。だが米中両国が真の冷戦になったら、実際は冷戦のレベルではすまない。米ソ冷戦も、キューバ危機があり、ベトナム戦争があり、南米中米のゲリラ戦があり、冷戦ではなかった。

いきなり「米中戦争」になることがない理由

ただし、いきなり米中間で「トゥキディデスの罠」(覇権国に新興国が挑戦、戦争になること)が始まるとは言わない。なぜなら、米中対立を煽る勢力がいる一方で、アメリカがコロナ危機で投下したジャブジャブのマネーは、中国に投資をしているアメリカのヘッジファンドやプライベートエクイティを救済したからだ。

これでアメリカのマネーの中国への投資も再開される。少なくともアメリカ国内の国際金融筋が中国への投資を止めることはないだろう。彼らは仮に自国が衰退しても自分達はマネジメントできるスキルを持っている。米中のどちらが勝とうが、自分たちが生き残ることこそが重要。それが金融のDNAである。

このことを象徴するように、あらゆる国の年金マネーが投資している、世界株式指数の「ALL COUNTRY WORLD INDEX」(MSCI社が提供)には、中国やロシアの企業で、安全保障上アメリカからビジネスの取引を禁止された企業も組み入れられている。今、トランプ政権はアメリカの公的年金が中国企業に投資するのを止めようとしているが、全体からみれば焼け石に水だ。そして、FED(米連銀)がバランシートのリミットを青天井にしたということは、同じ道を他の中央銀行にも開いたということでもある。ならば、中国も同じことができる。

いち早く経済を再開した中国は、コロナで苦しむアフリカや東欧、東南アジアの開発途上国への援助姿勢を強めるだろう。IMF(国際通貨基金)の総会で自国の票を中国へ入れる形で恩を売れば、いずれはIMFでアメリカだけが持つ優位性(拒否権)も弱めることは可能だ。恐らく、それが事実上の「ドルの覇権の終わりの始まり」になる。

その際、中国元が通貨として米ドルにとって代わるイメージまではない。だが、通貨間の相対評価のドルインデックスに関係なく2016年にIMFのSDRのバスケットに入った中国元は、間接的にドルの優位性を失わせることは可能だ。

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