今のままではトランプが負けるこれだけの理由 コロナで劣勢の陣営に「逆転策」はあるのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

まず、原油価格がここまで低迷すれば、1971年のドルショック以来、ドルの覇権を支えてきた「ペトロダラーシステム」は揺らぐ。危機を察知したトランプ政権は、原油に代わる基本商品の穀物で、農業大国のブラジル等と組んでOPEC(石油輸出国機構)に代わる世界組織を模索しているようだ。だが、仮にそんなものができても、参加国がこれまで通り、決済で米ドルオンリーに同意するかは疑問だ。

「中国バッシングの真の目的」は、トランプ再選にある

この近未来を象徴するように、コロナの騒動のさなか(4月16日)に、スティーブン・ムニューシン財務長官は、バランスシートが健全なIMFが、SDR(特別引き出し権)を拡充してコロナで苦しむ世界を救うという提案を、烈火のごとく怒り否定した。当然だろう。同長官はまさに、その意味するところを知っているからだ。

だが、トランプ政権が自分でグローバリゼーションをひっくり返し、アメリカファーストとナショナリズムにひた走れば、否応なしにドルの役割は徐々にIMFのSDRに移っていくだろう。中国はそれを後ろで援助すればよい。結局のところ、アメリカに残されている優位性は、先の世界大戦同様、圧倒的な軍事力である。ではトランプ政権はそれを使うのか。

コロナウイルスの発生源をめぐる駆け引きで、マイク・ポンペオ国務長官は「武漢のウイルス研究所が発生源であるという多くの証拠がある」と言い放った。ただ、その表情をみて、個人的にはブッシュ政権で「フセインは大量破壊兵器を持っている」とのストーリーを展開した、軍人出身のコリン・パウエル国務長官(当時)を思い出した。

ポンペオ氏もパウエル氏も職務に忠実なアメリカ人である。だが、2人とも「どこか虚ろな雰囲気」なのは共通している。世界は、そのメッセージを理解しているだろう。

一方、民間で過激に反中運動を展開しているのは、トランプ大統領の「選挙対策装置」(Apparatus)であるスティ―ブ・バノン氏らのグループだ。今、彼らが展開する情報番組「作戦司令室(WAROOM)」は、世界の保守系メディアと連携して、日々、反中国共産党のプロパガンダを展開している、

筆者は彼の番組を初回からほとんど観ているが、バノン氏の発言は矛盾だらけだ。彼の真の目的は、アメリカを中国との頂上決戦に導くというよりは、アメリカ内の中国嫌悪感を促進させ、トランプ大統領の再選を助けることであることは明らかである。

ここで中国を徹底的に悪者に仕立てておけば、大統領選で民主党のジョー・バイデン氏との一騎打ちになったとき、上院議員としても、副大統領としても長期にわたり、アメリカと中国とのパイプの最前線にいたバイデン氏こそ「中国の協力者」として、悪者に仕立てることができるからだ。

次ページトランプ大統領の再選を左右する州とは?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事