原油絡みの金融商品ETN、「即死条項」にご用心 原油価格急落で早期償還と上場廃止のリスク

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早期償還後、証券業界が設置する「証券・金融商品あっせん相談センター」には、VIXインバースETNについて多くの苦情が寄せられた。証券取引等監視委員会も実態把握に動き、営業現場が知識不足のまま同商品を拡販したこと、早期償還条項をはじめ、詳細な説明を行っていなかったことなど、売り手である証券会社の問題点が指摘された。

中でも、同ETNを多く投資家に勧めていた野村証券は、販売時の情報提供において不足があったとする謝罪コメントを発表。証券・金融商品あっせん相談センターでは、2018年度に投資家の損失をめぐって600件を超える和解あっせんが行われたが、その多くは同社の顧客だったとみられる。和解では投資家の被った損失額の2~5割を証券会社が負担するという、実質的な投資家救済策が採られたようだ。

早期償還の可能性を注意喚起するが…

では、原油ダブル・ブルETNはVIXショックの二の舞にならないのか。

野村ホールディングスは東洋経済の取材に対し、「商品性やリスクについて十分な説明に努めている」とコメント。さらに、「顧客の理解に資するよう、早期償還についても記載した商品説明書を提供し、同ETNを保有している顧客や初回買い付け時の勧誘の際に使用してきた」と説明している。3月9日と4月27日には、早期償還の可能性も含め投資家の注意を喚起するリリース文を公表するなど、事前警告にも余念がない。

だがそもそも、原油ダブル・ブルETNの商品性に問題はないのだろうか。金融商品に詳しいファイナンシャルプランナーの横田健一氏は、「原油などのコモディティ(商品)を証券化して取引可能にすることがそれほど必要なことなのか」と疑問を呈す。適度なリターンが期待できる株式や債券、不動産と異なり、資産形成という観点ではコモディティに投資する必要性は低いと考えられるからだ。

加えて、早期償還条項のついたETNをめぐっては、問答無用で上場廃止となるリスクを看過できないとして、上場商品として広く一般に販売すべき商品ではないとの意見もある。

そのような意見に対し金融当局の関係者は、「『ふぐは食いたし命は惜しし』ではないが、リスクの高い金融商品を求める投資家も一定数いる」としたうえで、「適切に商品を提供するのが証券会社の役割」と語る。

VIXショックの教訓を生かせるのか。証券会社と投資家の双方が試されている。

緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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