原油絡みの金融商品ETN、「即死条項」にご用心 原油価格急落で早期償還と上場廃止のリスク

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原油ダブル・ブルETNは、日経・東商取原油レバレッジ指数が前日比で100%以上下落すると、早期償還され、上場廃止となる。レバレッジ指数が前日比で100%下落というのは、原油価格が1日で半値以下に下がるというイメージだ。

投資家は強制的に損失を確定させられ、市場からは一発で退場となる。このため、早期償還について定めた条項は「即死条項」とも呼ばれている。

現在は新型コロナウイルスの感染拡大という有事の状況だ。平時ならいざ知らず、こういう状況下で原油価格が1日で半値以下になる可能性は決っして低くない。実際のところ、3月以降に2度、早期償還の条件に近づいた。

過去にもあったETN早期償還の事例

1度目は原油レバレッジ指数が前日比で69.8%下落した3月9日、2度目は同指数が61.4%下落した4月22日だ。いずれも国際的な原油市場で価格が急落した直後だった。新型コロナウイルスの第2波も予想されている中、原油価格の先行きについて決して楽観できない。

野村の発行するETNとしては、過去に「NEXT NOTES S&P500 VIXインバースETN」(VIXインバースETN)が早期償還の憂き目を見た。この商品は、VIX指数(ボラティリティーインデックス)と逆の値動きをするハイリスク商品だった。

「恐怖指数」と呼ばれるVIXの数値が上がると、市場の不安が高まっているとされる。VIXと逆の動きをするこのETNの価格は、市場が安定的に推移しているときは緩やかに上昇し、株価下落など市場が急変したときには大きく下落する仕組みになっていた。

早期償還条項に抵触したのは2018年2月6日。アメリカの金利が上昇したことを受けてVIXが急上昇した。「VIXショック」と呼ばれることになった日だ。VIXインバースETNは早期償還と上場廃止が決定、VIXショック前日の価格は約3万円だったが、1144円で償還されることになった。ショックの前日にこの商品を購入した人は4%しか元本が戻ってこなかった計算になる。

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