新規感染者は2月29日の909人をピークに減り続け、現在は毎日10人前後で推移している。韓国の検査体制は国際的に評価され、4月には60万回分の検査キットがアメリカに輸出された。
昨年からソウル市の大学院に通っているかおりさん(40代)は、「最初の頃は、政府も混乱している感じでした」と話す。
韓国政府は感染者が1人の時点から、行動履歴を徹底的に追跡。本人の記憶があいまいな部分は、韓国版マイナンバーに紐づくクレジットカード情報や携帯端末の情報などを参照し、感染者が訪問した店や場所をすべてサイトで公開した。
「日本だとちょっと、個人情報が問題になって真似できないと思います。韓国でも批判の声はありましたが、政府が押し進めていきました。そのうち2月後半に宗教施設でクラスターが発生し、感染者の立ち寄った場所がどんどん増えて、みんな外出しなくなりました」
「外国人は後回しかもしれない」
町から自主的に人が消え、企業は次々にテレワークを導入。学校は休校となりオンライン授業が始まった。
当初、不安に駆られた人々がコロナ専用電話に殺到し、検査が受けられないまま重症化することもあった。政府は3月1日時点で10万件に満たなかった検査数を拡大し、3月31日にはトータルの検査数を41万件にまで増やした。
背景には、2015年に流行した「MERS(中東呼吸器症候群)」対策の失敗がある。政府は同じ過ちを繰り返さないために、2016年に民間セクターでも感染症検査ができる制度を設立。そのおかげで現在、全国953か所の施設でコロナウイルスの検査・診療が行えるほか、新たにドライブスルー検査やウォーキングスルー検査も導入した。
韓国では自宅隔離となった場合、自治体が食料やマスクなどの支援物資に加え、支援金を給付する。これらは居住外国人も受け取ることができ、ウイルスに感染した場合の治療費は国籍を問わず無料となる。
ソウル市では多言語の相談窓口を用意しているほか、病院への通訳にも対応。「不法滞在者も通報されることなく治療を受けられる」と呼びかけている。また5月末までに期限が切れる滞在ビザは、自動的に3カ月延長となる。
だが、韓国に暮らすかおりさんは「外国人はいざとなったら後回しだろう」と感じている。例えば、政府はマスクを曜日ごとに購入できる「マスク5部制」を導入したが、健康保険に加入していることが条件で、未加入の外国人は除外されていた。ソウル市で外国人向けのマスク配布が始まったのは、4月に入ってからだ。
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