コロナで危機「地方交通」、まず必要な対策は? 乗客大幅減で「生活の足が奪われかねない」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、運輸収入が激減する中でも、安全対策をはじめとした必要な投資は行わなくてはならない。そのため収支は大幅に悪化し、今後資金繰りが問題になってくると事業者側では想定しているという。

フォーラムでは、このままだと2020年度上半期中に多くの交通事業者が資金繰りに行き詰まるのではないかという予想も出た。破産などという事態になれば、地域への経済的なショックは計り知れない。

一方で、制度上の問題から減便や運休は簡単にできない。帰宅時間帯をはじめとして需要が増えている時間帯もあるといい、ただ減便すればいいというわけにはいかないのも事実だ。また、鉄道は固定費の割合が高いが、バスは人件費の割合が高いなど、同じ旅客輸送事業でも経営を圧迫する要因は異なる。

いずれにしても、声は上げていないものの資金繰りに行き詰まりつつある交通事業者は相当数あると考えられる。

赤字路線の補助制度にも課題

また、現状で国や自治体から補助金を受け取りながらなんとか運行しているローカル路線は、利用者が減少する中でも補助金が増額されず、赤字を埋め合わせできない可能性もある。

熊本都市バスの車両(編集部撮影)

フォーラムで発言した熊本都市バスの高田晋社長は、補助金について「内容によっては事前算定方式によってその年度の金額が4月に確定してしまい、年度末に精算をしないという仕組みもある」といい、急激に利用が減少している現状を受けて、一時的に現行の補助制度を見直すよう、熊本市や熊本県に要望したという。

さまざまな事業者の声やデータを紹介してきたが、これは本当に一部だ。「足並みをそろえて情報を出すべきではないかと思うが、データで出してくださいと言うと『データがありません』とか『社名を出さないで』と言われる」(加藤教授)のが現状だという。

しかし、今は地域輸送だけではなくさまざまな業種がコロナ禍によるピンチに襲われている。その中で、交通事業者自らが積極的に具体的なデータを示して声を上げなければ、深刻な現状が伝わりにくい。

次ページ「コロナ後」よりまずは足元の対策を
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事