コロナで危機「地方交通」、まず必要な対策は? 乗客大幅減で「生活の足が奪われかねない」

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フォーラムでは「適切な感染予防対策というのが何かわからない。手探りでやってきた。ガイドラインを出していただきたいと思っている」(谷島賢・イーグルバス社長)という事業者の声や、「車内での感染リスクや、低減するための方策などについて、医学的・疫学的見地からどのように判断されるのか共有されなくてはいけない」(加藤博和・名古屋大学大学院環境学研究科教授)といった学識経験者の声があがった。

諸外国の例を挙げると、中国では「旅客ターミナルおよび輸送における新型肺炎流行の予防および管理のためのガイドライン」が策定されており、リスクを地域ごとに段階付け、段階別に消毒の頻度や許容される最大混雑度、マスクの着用、検温実施など具体的な数値をもって細かく定められている。

またアメリカではCDC(疾病予防管理センター)が新型コロナから身を守るための方法を業種などに応じて示しており、バス事業者向けの文書では「可能であれば、少なくとも6フィートの距離を維持して他者との接触を制限する」「頻繁に触れる表面の定期的なクリーニングと消毒を実践する」「乗り降りを後部ドアからにすることを検討する」といった内容が記されている。

旅客輸送の現場で働く乗務員や駅員といった人々、また利用者は不安な中で日々をすごしており、ストレスやトラブルも増えている。この状況を改善するためには、他国の基準をある程度そのまま導入するなどしてでも、早急にガイドラインを示す必要があるだろう。

通学需要消え大幅減収

もう1つ、緊急に対策が必要なのは資金の問題だ。

ほとんどの場合、地域輸送を担う交通事業者は財政的なゆとりがない。コロナ禍で移動を自粛する動きが広がり、利用者数はさらに減った。地域輸送では重要な収入源である通学輸送もほぼゼロとなり、4月の収入は大きく落ち込んでいる。

フォーラムでは、ある鉄道事業者で4月1日から4月10日の現金収入が昨年同時期比で約70%減少したとの事例が発表された。減収の主な要因は、4月が通学定期の販売時期であるにもかかわらず、休校の影響でほとんど売れなかったことだ。

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