ヤマハの次世代「3輪電動車」に商機はあるか 次世代モビリティの戦いに「楽しさ」で挑む
「会社から寮に戻るときのような、短い距離を自転車よりも楽にできたらと、考えたものです。トリシティの機構を使った新しいアイデアとしてやってみようという感じでした」
こう説明するのは、ヤマハ発動機株式会社モビリティ技術本部NPM事業統括部モビリティ戦略部企画2グループ開発プロジェクトリーダーの倉掛元仁氏だ。
社内のアイデアグランプリに提案されたトリタウンは見事、金賞を獲得。当時のヤマハ社内の上層部の受けもよかったため、すぐに正式プロジェクトに認められ、2017年の東京モーターショーに出品されることになったのだ。
「そこでの評判が非常によかったんです。しかも、女性などバイクに乗らない人たちからも好意的な声が聞こえました。これは間口が広がりそうだと思いました」と、同企画2グループグループリーダーの米田洋之氏は、2017年当時を振り返る。
さらに、欧州を中心に電動キックボードのシェアリングが普及してきたことで、トリタウンの使い道も見えてきたという。
実証実験で見えた、他とは違うその特徴
2017年の東京モーターショーでの手ごたえを受け、社外でトリタウンの実証実験を行うことになった。社外で走ることのできる試作車を約1年かけて作り、2019年4~5月と7~8月、11月の3回に分けて実証実験を実施した。
「お客様の声では、『楽しい』という回答が突出していました。だいたい99%です。しかも、電動キックボードなどの他の電動パーソナルモビリティに乗ったことのある人からも、トリタウンのほうが楽しいと言っていただけました。身体を使ってアクティブに走るのが、スキーを滑る感じにも近いんです」と米田氏。
また、実証実験では最高速度を20km/h以下に制限したことも、楽しさにつながったという。
「低速なので、一緒に走る他の人とコミュニケーションが取れるのも楽しいと。それに低速なので、景色を楽しむ余裕もできます」と米田氏。
「歩行領域から、時速25km/hまでカバーできるのもトリタウンの特徴です。弊社の人間に乗らせると、みんながみんな“これでワンメイクレースをやろう”と言い出すんですよ。実証実験でも、オートバイに乗っている人が2回も3回も繰り返し乗っていました。そういう楽しさはヤマハっぽいと思いますね」と倉掛氏。
ちなみに、実証実験では約600名がトリタウンを体験したが、5分ほどの練習で、そのほとんどが問題なく乗りこなすことができたという。
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