欧州の交通サービス「MaaS」は日本に根付くか 東急・JR東日本が伊豆で参入、今年が正念場

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フィンランドで普及する新たな交通サービス「MaaS」は日本に根付くか(筆者撮影)

最近しばしば聞かれるようになったMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という言葉。我が国では自動車業界でよく取り上げられるので、自動車に関連する用語だと思っている人がいるかもしれない。しかし実際は逆に、マイカーに対抗すべく生み出された考えである。

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国土交通政策研究所の資料によれば、MaaSはICT(情報通信技術)を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)をひとつのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念であり、利用者はスマートフォンのアプリを用いて、交通手段やルートを検索、利用し、運賃等の決済を行う例が多いとしている。ここでも「マイカー以外」という言葉が出てきている。

フィンランドでいち早くスタート

MaaSを世界でいち早く提唱したのは北欧のフィンランドだ。フィンランドでは2005年頃から、ICTを用いて公共交通をより使いやすくする研究を運輸・通信省が開始。その後は同時期に設立されたITSフィンランドが主体となって構築を進め、2014年に首都ヘルシンキで行われたITSカンファレンスでMaaSの概念を発表する。

このときITSフィンランドのCEOを務めていたサンポ・ヒエタネン氏が、翌年その名もMaaSグローバルという会社を設立。2016年に同社がリリースした「ウィム(Whim)」は、現時点でもっとも優れたMaaSアプリと評価されている。

ちなみにフィンランドの国土面積は日本とさほど変わらず、陸地の74%が森林で覆われ、島も多く、高齢化率は20%に達している。人口が約20分の1であることなどを除けば我が国と似ている部分が多い。

乗用車の保有率もひとり当たり0.6台で日本に近いが、携帯電話の保有率はかつてノキアが世界一の携帯電話メーカーだったこともあり、1.7台と日本の上を行く。交通と通信を担当する国の組織が同一であること、利用者が携帯電話に馴染み深かったことも、ICTを使ったモビリティサービスという発想につながったのかもしれない。

筆者は知人の大学教授らとともにヘルシンキに行き、運輸・通信省とヘルシンキ市役所、そしてMaaSグローバル社を訪ねた。

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